17話 ページ17
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ーAside
蝉の鳴き声とやら、夏の喧騒。
時折吹く夏の風は生暖かくて、嫌い。
・・・・・・でもこの ”嫌い” も全部。
気付いた時にはもう、夏色に。いや、君色に染まっていた。
隣に座っている彼を横目で見るなり、心臓が締め付けられるのは今日で何回目だろうか。
「・・・・・・飲み物、買ってくる。」
沈黙に耐えられなくなったんじゃない。
これ以上君と居ると、心臓が落ち着かないの。
菅原)『ん、おうっ。』
彼の返事を確実に耳に捕らえてから、数歩先にある ”いつもの” 自販機へ歩み寄った。
この炎天下の中でも、容赦なく赤く光っている ”ミルクティー” のボタン。
本当、辞めて欲しいよね。
間違えて買ってしまう人だっているのだから。
何一つ動かず、声なんて発さずジっと私を見つめるミルクティーに私も見つめ返してみる。
この子が居なければ私は彼に声を掛けられなかったかもしれない。
恋のキューピット、か。
こんな歳してお花畑すぎる脳内なのは許して。
菅原)『Aがミルクティーにするなら俺も。なんて、笑』
と突如、
耳元、いや、頭上から聞こえた声の主は明らかに君で、ふわりと柔軟剤が香る。
横からグンと伸びた、細くて白くて、でも筋肉質なその腕は小銭を持っていてあっという間に自販機の中へ飲み込まれていった。
あまりの距離の近さに、また煩く響く心臓の高鳴りと、遠くで聞こえる自販機の音。
きっと最初からだったんだ。
もう誤魔化せない。
いや、誤魔化したくない。
どうしようもなく、君が好きだ。って。
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作者名:充電アダプタ | 作成日時:2021年4月11日 14時