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「………拒否権は、「あると思うか?」チッ!」
思わず舌打ちをしてしまった私は悪くないと思う。←
先生の暴君さ加減には慣れ始めたものの、毎度ながら溜め息を吐きたくなる。
……如何にか此処から抜け出してさっさと帰ろ。
手っ取り早いのは異能か、と考えて人形の置いてある隅に目線を走らせようとした瞬間。
「?!」
「無駄な抵抗は止めておいた方が良い。君の弱点は調査済み、視界を塞げば異能は発動しない」
そうだろう?と耳元で囁かれた。
先生の冷たい手が私の目元を覆い、押さえられた反動で先生の身体に寄り掛かる。
煙管特有の仄かな香りに包まれる程の近さに、少し恥ずかしさを感じた。
「……そろそろうざったいですよ。私が先生に堕ちることはありませんし、そんな脆い感情はとうに捨てたと云ったでしょう」
「敢えての この距離感だ。それに、どんなに封じても感情は無限に湧くもの。これからは封じずに受け入れれば良い話だろう」
「は、、、?」
急に視界が開き、真っ暗から真っ白へと変わった。
ぼんやりとした景色に間近で綾辻先生が映っていた。
_____刹那。唇に温もりが触れる。
細められた金の瞳が、見開かれた私の瞳を見つめている。
くすんだ金の柔らかな髪が、私の頬を擽った。
直ぐに離れた綾辻先生の顔を、私はただ穴が空くほどに見ていた。
瞬間。自分の内側から
息が詰まるほど苦しく、思考回路が痺れたように動かない。
「ッや、、嫌だッ…!!」
脳を支配するソレが気持ち悪くて仕方なくて、いつも通り直ぐに捨てようとする。
するとまた、視界が塞がれた。
「駄目だ、自分の感情を受け入れろ。でないと進めないだろう。俺も、君も」
「ぅ、あぁっ、、、ッ!?」
手から逃れようと暴れる私を、先生は力強く抱き込んで抑え込む。
先生曰く、数分間に渡ってその状態は続いたらしい。私には何時間にも感じたけど。
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「……落ち着いたか。気分は?」
「最悪ですよ。気持ち悪いし、頭が回らない」
綾辻のシャツを握り締めて、苦しそうに息を吐く。
半ば強引に異物を押し込んだ彼女は病人のように弱り切っていた。
彼はそんな彼女の背を擦り、涙に濡れた目元を指で拭ってやる。
「久々の感情はどうだった」
「如何も何もありませんよ。お蔭で一つの思考に囚われます、他の感情を受け入れて中和を図らないと」
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雪見だいふく - このシリーズ大好きなので、続編書いて欲しいです!リクもさせていただきたいので、よろしくお願いします! (2021年10月22日 18時) (レス) id: 0b9e52d702 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 続編をお願いします! (2021年10月21日 22時) (レス) @page49 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみませんゴーゴリのヤンデレは…… (2021年10月5日 1時) (レス) @page45 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 上手だと思いますよ、棒人間しか書けない私にとっては羨ましいです。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - フョードルの制裁論お願いします (2021年8月22日 7時) (レス) id: 68ec6172c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年2月22日 21時