* ページ33
〇
太宰の諭すような声に、言葉に。心の内で猛省する気持ちが湧いた。
普段の彼からは考えられない言動だからこそ、響くものがあった。
「_____ご、ごめんなさい」
『しっかり回復するまで異能は使わないと、約束できるかい?」
「はい………ちゃんと休みます」
『偉いねぇAちゃん。という訳で_____』
『大人しく捕まってね?』
太宰の謎の宣告に疑問を発しようとした瞬間、知っている香水の匂いがふわりと鼻を擽った。
電話を耳に当てたまま固まる彼女の腕ごと抱き寄せられる。
片耳に、悪戯が成功して喜ぶ子供のような太宰の声。もう片耳は____。
「やァッと見つけたぜェ」
聞き慣れた低い声。
視界の端に、ウェーブのかかった樺色の髪が映る。
金魚のように口をはくはくさせ、声が出ない様子のA。
そんな彼女へ追いうちをかけるように、太宰から無慈悲な言葉が贈られた。
『御免ね?中也に居場所、話しちゃった☆』
「ッ!?なんで知っているのですか?」
『んふふ、ヒントはGPSだよ』
ほぼ答えだね、と太宰は呑気に話す。
Aには彼のヒントなんてものは耳に入っていなかった。
『居場所、話しちゃった☆』という無慈悲な宣告だけが脳内を支配する。
「ッ!この唐変木、包帯無駄使い装置ッ!!」
『うッ!国木ぃ田君に云われるより刺さるねッ…!』
「恨みますよ太宰さんッ!」
『いいねぇ!そのまま一緒に心中しようじゃな』((ブチッ
何者かに通話を切られたお陰で、太宰の言葉の続きを聞くことは叶わなかった。
………聞かなくて良かったのかもしれないが。
犯人は云わずもがな、彼女を後ろから抱きすくめる男のみである。
「よォA。あの青鯖に協力を仰いだのが間違いだッたな」
「お兄ちゃんが余計な事を云うからでしょ。何故か2号と3号にも探されてたし…」
「!……そこまで気づいてやがッたか」
「情報収集は本業だもの。それに、視えてたから」
すると、Aの前に二つの人影が落ちた。
仄かに香る匂いは背後にいる兄と同じで、その情報だけで影の正体が分かる。
『______捕らえたのか』
「あァ、丁度な。協力感謝するぜ」
今の中也とほぼ恰好が同じな2号の言葉に、彼は礼を述べた。
なんだかんだ云って仲の良いチーム三兄弟。
最初の頃はあんなに険悪な空気だったのに、とAは密かに溜息をついた。
〇
182人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪見だいふく - このシリーズ大好きなので、続編書いて欲しいです!リクもさせていただきたいので、よろしくお願いします! (2021年10月22日 18時) (レス) id: 0b9e52d702 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 続編をお願いします! (2021年10月21日 22時) (レス) @page49 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみませんゴーゴリのヤンデレは…… (2021年10月5日 1時) (レス) @page45 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 上手だと思いますよ、棒人間しか書けない私にとっては羨ましいです。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - フョードルの制裁論お願いします (2021年8月22日 7時) (レス) id: 68ec6172c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハル | 作成日時:2021年2月22日 21時