＊ ページ27
〇
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ！？」
思わず怒鳴りそうになり(もちろん太宰に)、咄嗟に自分の口を塞いだ彼。
代わりにその綺麗な碧眼を見開いている。
まさか重要書類を持って消えた相棒が、血のつながった妹のように可愛がっているAを抱きしめて眠っているとは、流石の中也も思わなかったらしい。
脳内をぐるぐると回る思考を振り払うように首を横に振りかぶれば、彼の鮮やかな橙色の髪が舞う。
(何ッでよりにもよッてAとなんだよッ……！！)
絶賛片思い中の彼女が、他の殿方と床を共にするのは大変頂けない。
太宰を連れ戻す、という当初の目的を忘れ、つかつかとベッドに歩み寄る中也。
彼の内に眠る独占欲が火花を散らしていた。
すっかり周りの見えなくなっていた彼は気付かなかった。
＿＿＿＿
「そんな事をしたら、Aが風邪を引いてしまうだろう？」
中也が布団を捲った瞬間、黒い微笑を浮かべた太宰が冷たい声で言い放った。
彼がすぐさま視線を向ければ、ぐっすり眠る彼女の額に唇を寄せる太宰が視界に入る。
「手前ッ……！」
「大声は止め給え。Aが起きる」
刹那。太宰の云った通り、少し意識が浮上したのか、「うーんぅ……」と彼女が呻く。
ギョッとした中也を余所に、太宰が同じ間隔で背を優しく叩けば、再び微睡むA。
寝かしつけるその姿は、まさに兄のよう。
「……Aには甘ェよな、相変ァらず」
「んふふ。実の妹みたいだと考えるとつい、ね」
「あーそォかよ。……ッて、おい寝ンな！仕事だッて云ッてンだろ…！！」
またAを起こさないように。必死な形相かつ小声で叫ぶ中也。
それを聞かなかったことにするかのように、太宰は寝る態勢に入った。
中也が起こそうと揺さぶったり、頭を鷲掴みにしても彼は起きなかった。
寝たふりの可能性も捨てきれなかったが、太宰に振り回されることにうんざりした彼は、珍しく早々に諦めた。
その代わり、中也も太宰の反対側に回ってベッドに上がる。
(クソ太宰の野郎に乗せられたようで癪だが………)
ごろんと寝転がり、太宰の腕の中にいる彼女の背に手を伸ばす。
お腹に手を回し、太宰に負けないくらいギュッと抱きしめた。
いつもより近くにある彼女の髪の毛に頬を寄せれば、仄かに甘い香りがして。
……自分でも分かったくらい、頬が熱かった。
〇
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 182人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪見だいふく - このシリーズ大好きなので、続編書いて欲しいです！リクもさせていただきたいので、よろしくお願いします！ (2021年10月22日 18時) (
レス) id: 0b9e52d702 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 続編をお願いします！ (2021年10月21日 22時) (レス) @page49 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみませんゴーゴリのヤンデレは…… (2021年10月5日 1時) (レス) @page45 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 上手だと思いますよ、棒人間しか書けない私にとっては羨ましいです。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - フョードルの制裁論お願いします (2021年8月22日 7時) (レス) id: 68ec6172c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハル | 作成日時：2021年2月22日 21時
