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No.2 ページ12





「…おや、幹部の想い人は罪な方ですねェ」


「あァ、ホントどーしようもねェ奴だよッ!」

言い終わるや否や、中也さんの鋭い蹴りがとんでくる。
しゃがんで避けてから、追撃を避けるために後方に跳んだ。


「チッ、おいその演技やめろ。分かッてンだよ、手前がスパイだッて」


「…予想通りですね。撤退を決めて正解でした」


さぁ、マフィアの私はお終い。スイッチを切りましょう。

心労の負担を減らすために、自分を守る術としていた変装をやめる。
かけていた眼鏡を取り、おろしていた髪を軽く結った。

今の私は勤労の徒、政府の人間。


「…それが普段の手前かよ」

「ふふ、ご想像にお任せします」


じぃーっと此方を見据える彼に、私は笑顔で銃を向けた。
もう私は貴方の部下ではありませんから。


「さて、上司の睡眠の為にも早く帰らないと。……そこをどいてくださいますか?」

すると、やけにあっさり引き下がる中也さん。
臨戦態勢に入っていた私がバカみたいじゃないか。

私は拍子抜けしながらも歩き出す。勿論、彼の動向を警戒しながら。


__壁に寄りかかる中也さんの前を通った瞬間だった。彼の目が光ったのは。



ッッッ!来たッッ!!


私は直ぐに彼を銃で撃った。

けたたましい銃声が鳴り響くのと中也さんが私の身体を壁に叩きつけたのは、ほぼ同時だったと思う。


「かはッッッ……!」

衝撃で肺にあった空気が一気に抜け、一瞬呼吸が出来なくなる。
自身に向けて撃たれた銃弾を、重力操作で跳ね返したのだろう。
代わりに私の頬に掠り、傷口から血が零れた。

痛い、地味に痛い。


「俺がそう簡単に帰すと思ッたかよ」

「ッそうですね、組織に忠実な貴方でも"想い人"は傷つけないだろうと思ったのですが…」

私の言葉がお気に召さなかったのか。

彼は壁に押さえつけていた私の両手首をギリギリ、と締め上げた。


「…このまま俺と来るか、俺に始末されるか…。どうする?」

「…要は死ねということですか」


「まァ、俺と来るならドロドロに甘やかして、一生俺なしじゃいられなくしてやる」



まるで例を示すように。

私の頬に着いた血を舐めとるように傷に口づけた。
思わず痛みで顔をしかめると、彼は何故か笑って再び同じ場所にキスを落とす。



「い゛ッ…」

「俺はどっちでもいいぜ」

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紅月ミレー - リクありがとうございました(*^□^*) さっそく、読みました羅生門可愛いですよね(〃ω〃) モフモフしていそうですもんね、芥川様がちょっぴり可哀想でした(´;ω;`) (2020年12月15日 18時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - ハルさん» はい、分かりました(*^□^*) 楽しみに待ってます(v^ー°) (2020年12月13日 9時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
ハル - コメントありがとうございます!無理矢理終わらせた感が否めないですが…。僕くんはあと少しで書き終わりますので、もうしばらくお待ちくださいm(__)m (2020年12月13日 0時) (レス) id: dca913437b (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - リクの続きありがとうございました(*^□^*) 中也様と仲直りして良かったですね(o^−^o) そして、やっぱり最後は爆破イタズラで大成功でしたね(^皿^) (2020年12月9日 18時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - 太宰治様と一緒に仕返し作戦、一体どうなるか楽しみです(v^ー°) もし、中也様にバレたら…見られたら((((;゜Д゜))) 物凄くお仕置きが待ってますね(o^−^o) (2020年12月7日 17時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハル | 作成日時:2020年10月26日 23時

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