さようなら。 ページ26
「いるんでしょ、グラン」
名前を呼べば、ふわりと、建物の影に現れたグラン。
ううん、基山ヒロト。
「やっと思い出したんだね。A」
「正直物凄く胸糞悪い」
潮風で湿気った髪の毛を振り払って靡かせればグランが微笑む。
「おかえり、俺達の姫様」
「それやめて。思ってもいない癖に」
全部じゃないけど、思い出した。
私は、エイリア学園にいた。
血が滲むような努力をしても、あの人は認めてくれなくて。
日に日に、心も体も疲弊していったあの日々に。
「私は…プロミネンスの……A」
「やだな、ガイアに来てもいいよって言ってるのに」
「ふざけないで」
べちん、とグランの手を叩けばそのまま手を取られ静かに包まれて。
真・帝国学園の甲板にふわりと足をつけた。
苦痛に悲鳴をあげる真・帝国学園の人を眺めれば、グランが嬉しそうに笑った。
「やっぱり、君はその目の方がいいよ」
「私はグランの目嫌い。バーンも、デザームも…皆、嫌い」
見上げれば、悲しそうに眉をひそめられた。
「何があっても、もう笑いかけてはくれないんだね」
「どの口が」
吐き捨てれば、ジャケットのポケットに手を寒そうにしまったグラン。
ねえ、修也くん。
肝心な時に傍にいてくれない、特別な男の子。
さようなら、サッカーの楽しさを思い出させてくれた
サッカーバカな円堂くん。
さようなら、いつでも笑いかけてくれたた親友の秋。
さようなら、雷門。
「もう泣かなくていいんだよ。A？俺達が全ての恐怖から君を守ってあげるから…君は君のまま、強くあればいいよ」
優しく涙を拭ったグランは、冷たい目を細めて笑った。
私を、弱いと罵り、使えないと、ボールで投げ飛ばして
散々、痛めつけて、ボロ雑巾みたいに捨てたのに。
都合のいい事を吐き捨てる。
知ってる、戻ったところでプロミネンスに居場所はもうない。
あの日、バーンに捨てられたから。
捨てられた私にガイアへ受け入れられるはずはなくて。
「強くなんかない…もう、2度とボール蹴れないもの」
「A…君をそうまで追い詰めたのは誰？」
「どう考えたってグラン、君達なんだけど」
試合は終わり、船…いや、真・帝国学園は沈み始めた。
キャラバンへ戻った瞳子監督…ううん、姉さんには伝わっただろう。
私が、記憶を取り戻してAとしての道を選んだこと。
雷門のみんなは、きっと私を裏切り者だと罵るんだろうな。
グランへ手を伸ばせば、そっと、消えて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「イナズマイレブン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
守羽(プロフ) - マナさん» コメントありがとうございます。すみません…手違いで先に続編を立ててしまった次第です。本日続編分まで合わせて更新するのでお待ち頂けたら幸いです。 (2022年8月19日 16時) (
レス) id: d0d25ba477 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - この話の続きが気になってますが、パスワードがかかっており話が読めないのですが…… (2022年8月19日 9時) (レス) id: dac527e381 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：楸 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時：2022年8月14日 14時
