自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep2 (ページ25)

今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:14,330 hit

見たかったトライペガサス。ページ25

「え！！もう成功した？！もう帰った？！」

大慌ててで補習をキリのいい所まで進めて先生からの許可を貰って切り上げてグランドへ駆けつければ、一之瀬さんの姿はなく。
みんな普通に練習してました。

「Aさん…なんか、ごめんね」
「うぅ……」

見たかった。見たかったトライペガサス。
項垂れながらベンチへ座り込み、タオルの数を数えて。洗濯分と仕分けを始めれば、木野さんからマネージャーの仕事が板について…と少し申し訳なさそうな声でフォローされた。

不意に、円堂くんと木野さんが空を見上げて。

「あの飛行機かな」

なんて呟いていると、円堂くんが空に浮かぶ飛行機に向かって叫ぶその瞬間、足音が聞こえて振り向くと一之瀬さんが立っていた。
思わず絶句して口を覆えば、円堂くんの言葉に対して一之瀬さんは「うん、やろう！」と爽やかな笑顔を返していた。

皆で円陣を組んで喜んでいる中、木野さんの隣にこっそり寄って。
よかったね、と微笑んでみると本当に嬉しそうに力強く頷いてくれて。

「皆さ〜〜〜ん！！」

音無さんが大急ぎて駆け寄ってきて。肩で息をしながら、次の対戦相手が決まった事を教えてくれる。

「どこだ？」

円堂くんの言葉に、修也くんの方を見ながら音無さんは。

「次の対戦相手は、木戸川清修です」

皆の動揺の中修也くんの瞳は揺れていた……。

着替えて帰り支度をする中、部室の外で修也くんを待てば1番最後に出て来た。

「や。遅すぎませんか」
「…すまん」

素直に謝れるとそれはそれで。並んで歩き出せば、いつも通りなので特段気にはしないけれど、身に纏う空気が重たい修也くん。
なんて声をかけるのが正解かな。

考え悩んでると、足元の石ころに躓いてよろける。咄嗟に修也くんの服を掴んでしまって行き場のない動揺が。

「ん」
「え…あ、うん」

差し出された手のひらに、お手。をするように手を置けばそのまま手を引かれて歩き出した。
え？転ぶからってこと？え？

繋がれた手から全身へ緊張が血をめぐって流れて行くようで、猛烈に。恥ずかしい。
気付いてほしい、普通、付き合っていない男女は手を繋いで歩かないんだよ。修也くん。

無言で手を引かれたまま、真っ直ぐ私の家までの道。
手汗とか、大丈夫でしょうか。心臓の音、伝わってないかな。

修也くんの顔を覗き込めば、それ所では無さそうなほどに。余裕のない真剣な眼差し。

次の対戦相手、木戸川清修のこと
気になるよね、割り切って試合、なんて…難しいよね。