自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep2 (ページ11)

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血の気。ページ11

少林寺くんから少し離れるとすぐに自分の技としてそれを身に付けた。もしかしなくても1年生って頭良い？？
ベンチへ向かって駆け出せば、染岡くんと豪炎寺くんのドラゴントルネードが途中でその炎を無くしてしまった。

不思議に思いじっと見ていれば、周りのみんなも少しづつ歯車が噛み合わなくなったようにズレていたり。ベンチへ戻り響木さんへ声をかける。

「響木さん、皆の動きについて何ですが」
「Aも気付いてるのに、当の本人達は…」
「え、今馬鹿にされて…待って！私修也くんよりも先に気付いた？」

響木さんの目の前へ飛び出して目を輝かせれば、ちょっと残念な子を見るような目でズレるように促されて。お前も皆と同じようにいつも通りにしてろ、とお喋り禁止のマスクを渡される。いつの間に…？

つけてろ、と言われ大人しく付けて椅子へ座り込んだ。
雷門さんの冷ややかな視線を受けながら皆の動きをよく観察する。一人一人の瞬発力は勿論、きっと色んな物が力になっている。

でも。

1つでも違う動きや大きさになった歯車はうまく回らず、最悪は空中崩壊もいい所だ。ここは雷門の頭脳の修也くんに頑張ってもらいたい所なんだけど…と、修也くんを見れば円堂くんと染岡くんの3人で話し込んでいた。

ちょっと行ってきます、と木野さんと音無さんが3人の所へかけて行く。

「お前は行かないのか」
「…」
「……すまん、取っていい」
「行ってもお馬鹿な私には何も出来ませんから。それに、皆は自分の力で1歩ずつ進んでいくでしょう？それを見てるのが、たの……楽しくて…？」

どくん、と心臓が大きく息をすれば知らない子供達がサッカーボールを蹴りあって。皆が笑顔だった。でも、死を理解する程の騒音…いや、世界の断末魔と共にその子供達からは笑顔が消えて…。

頬を1粒の涙が伝った。

皆、何よりもサッカーを好きだったんだ。喧嘩しても、嫌いあっていても、いがみ合っても、パスを繋いで1点取れれば皆で肩を抱き合って喜んでいて…。

優しくてまあるい目をした子が振り向いた。

『A！早く僕達のことを思い出してね』

ﾋｭｯと喉から音が盛れる。咄嗟に口を覆い心臓を抑える。どっどっどっと、早鐘みたいに強く振動して、体全体に音が伝達していく。
血の気が引いていく感覚が痛くわかる。

潜在意識だろう。思い出したくない私と、思い出の中の私と記憶の彼らがせめぎ合って、存在を痛く主張するのだ。

記憶の中から、殺させはしないと。