自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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選手。ページ44

皆の練習の姿を観察している響木さんの横でテーピングや絆創膏の補充をする。

「約束してたから」

そう呟けば響木さんがこちらを見下ろした。目が合っているのかはサングラスのせいで何もわからないけど。

「中学入る前に、円堂くんと一緒にサッカーしてたみたいで。たぶん、たった1日だけ」
「みたい……？」
「記憶がなくて。でも、ちゃんと円堂くんは約束を覚えてくれていて」

サッカー部に入る時も、マネージャーでもいいって言ってくれたんだけど。ユニフォームは渡せないけどジャージなら。って
たぶん、円堂くんの中での私は同じフィールドに立っているんだと思う。

「お前、サッカー出来るのか」
「もうずっとやってないから出来ないと思う」

ぱたん、と薬箱を閉じて眉を下げて乾いた笑い声が出てしまった。
何かを考え込んだ響木さんは突然皆を止めた。

「集合ー！」

円堂くんの掛け声で皆がベンチへ戻ってきて。その様子を見ていた木野さんと音無さんもバソコンを閉じて集合した。

「A、練習に参加してこい」
「…………ええええ？！？！？！」

沈黙の末皆と一緒に私も絶句した。この親父やりやがった。

「できません！」
「やってみてから判断する」
「響木さん！！」

威嚇するように睨みつけると全然怖くないとでも言うように、しっしっとグランドへ行くように指示された。
豪炎寺、お前が一緒にいけ。あとは全員DFだ、と。私は修也くんを見てお互いに困ってしまった。

当然だ。修也くんの目の前でなんてやったことない。
それどころか、ボールを蹴ったのなんて覚えていない記憶の私だ。

「とっとと動け」
「はい！」

皆と一緒に情景反射で返事をしてグランドに入ってしまった。
準備運動はいつもマネージャーも一緒にやるから軽く足首だけ解して。
修也くんをちらりと見れば顔色は変わらない。

「修也くんにボール渡せばいいよね」
「打てそうなら打ってみたらどうだ」
「うぅ〜……その前にこの人数抜けられるかな」

困惑の色を隠せない皆がハーフラインから下がって待機しているのだ。
むりだよう。

木野さんが笛を大きく吹き鳴らして、キックオフの合図だ。
仕方ない。

とん、と修也くんにパスを出して2人で並行して上がっていく。
そもそも私はパスを受けて倒れたりしないでしょうか。

「A！」
「うわっ」

当然、スピードも威力も十分なパスを受ける。
不思議と、体が勝手に動いて何の苦もなくそのパスを受けめる。