自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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検査と退院と。* ページ5

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どこも、悪くない。

私生活をしていて不自由なんて感じない。
血液検査もやった、心電図もやった。なんか、骨の写真も内蔵の写真も撮った。検査と言われるような検査をいっぱいやった気がする。

それでも、退院は出来なかった。

「どこか…悪い所あったんですか」
「それを探すための検査だ」

看護師さんがにこにこと笑いかけてくれる。
安心させようとしたものなのか、なんなのか。

そんな事を思い老けてるとお姉ちゃんが、そっと声をかけてきてくれる。

「Aちゃん、退院は明日でもいいよって。お姉ちゃん荷物まとめるから、Aちゃんも荷物まとめてね」
「うん」

衣類やお菓子をまとめ始めるお姉ちゃん。
不意にお母さんが入ってきてお姉ちゃんと楽しそうに、嬉しそうに荷物をまとめる。

「ねえ、お母さん、お姉ちゃん」
「うん？」

振り向いた2人に、思ったことを飲み込んで。

「お家に帰れるの楽しみっ」

にぱっと笑い返した。ある程度荷物をまとめ、大きなものは運び出してくれた。

「それじゃあ、また明日迎えに来るね」
「うん。また明日！」

扉が締まると、お姉ちゃんの声が聞こえた。
笑い声がして、こんこんと、扉を叩く音。

「どーぞ」
「退院、決まったんだな」
「うん。何の異常もないって」
「それは何よりだな」

そもそも、検査する意味なんて、理由なんて。

「じゃあ、今日で最後なんだな」
「んぇ…？」

ぽかん、と口が空いてしまった。

「まさか、寂しいとか」

うーん、と眉を寄せ困ったように笑う。そうみたいだな、と。
よくよく考えてみれば、退院したら何の接点もないのだ。
携帯なんて持ってないし、学校も違うし。そもそも、他人。

不意に、ほっぺに暖かい感触がして、涙が。

「おい、」
「だって〜！修也くんが寂しいとか言うから」
「Aの方が寂しそうだな」

頭をくしゃくしゃにされ、あやされる。
自分だって寂しいっていったくせに。

「あーぁ、同じ中学だったらよかったのに。そしたら、学校も楽しいんだろうなあ」
「…それは、学校でもお前の勉強をみろってことか？」
「違うよ！？」

冗談だ、なんて言って楽しそうに笑う。
うん。私も楽しい。

制服の裾、少し引っ張ると、ん？と目を細める。
また、会う約束なんて出来るような関係じゃないんだ。

ただの。

「また、会いたい！」
「そうだな、また」
「…街で見かけたらちゃんと、声かけてね」
「ああ」

マフラーに再び埋もれた修也くんは寒そうに帰っていった。

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