自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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忍び寄る影。ページ39

秋葉名戸との斜め上の展開の白熱した試合を終え、無事に準決勝に突き進むことになった。

皆さらにやる気が漲っているようで。
修也くんの足も無事に治り、先生からのお許しも出た。

いつも通り練習に励んでいれば、突然雷門さんが冬海先生に声をかけてきた。

遠くで見ていた私は、木野さんと顔を見合わせて皆と一緒に車庫へ向かう。
確認したいことがあるようで冬海先生に車を動かすことを指示する雷門さん。冬海先生はエンジンがかからないとわたわたしてみせ瞬間真剣な雷門さんがふざけないで！と声を張り上げた。

事の重大性が垣間見えた。

そうして、自らブレーキオイルを抜いたことを告白した……。

「選手がどうなってもいいのか！！」

冬海先生の言葉に怒りをあらわにした修也くん、そして雷門さん。
なんだか、とても、怖く感じて。
修也くんの服の袖口を指先で掴んで……。

帝国学園の監督の指示……。
その、言葉が嫌なことを連想させる。ねえ、ねえ、修也くん。もしかして、夕香ちゃんは。

「スパイならもう1人います」

ねえ、土門くん。

嫌なことで頭がいっぱいだった脳に鈍器で殴られたような衝撃が。
選手の中にもスパイが居るなんて、考えもしなかった。

「そういえば、帝国から来たって」

そんな言葉が聞こえて、土門くんに集まった視線に、堪らず逃げ出した土門くん。
雷門さんがキャラバンを使っていは行けないという警告をされた紙を皆へ見せてくれる。

「これは、土門の字だ」

円堂くんと木野さんは土門くんを追いかけに行った。後ろ姿を見守っていれば雷門さんが修也くんへ確認する。

「豪炎寺くん、気付いていたでしょう」
「……ああ」

どの段階だ？見上げれば帝国のディフェンス技を使ってたことを教えてくれた。それだけじゃ確証は無いでしょ……頭良すぎませんか。

ずっと裾を握っていた私に気付いてないフリを続けてくれる修也くんに安堵をしながらも手を離せないでいる自分が情けなくて。

1度連想してしまった嫌なことは修也くんも沢山考えたことだと思う。
雷門へ来て、帝国のプレーを目の当たりにして、帝国の監督からの指示で危険な事をした冬海先生を見て。
きっと、疑惑が確証になって。

部室のロッカーから鞄を出して……手帳を開いた。
私に出来ることなんてやっぱり何も無いから。

「A、帰らないのか」
「今日は寄るところあるんだ」

ん、と手を振り円堂くん達と一緒に帰り始めた後ろ姿を見送って公衆電話へ。

「Aです」