自由な君と。- 豪炎寺修也 -

今日:15 hit、昨日:13 hit、合計:27,573 hit

怪我。ページ33

「私達はこのまま病院へ行きます」

そう言うと、修也くんの荷物を適当にまとめて抱え込む。
ぱちくりと瞬きをした皆を置いて、修也くんの肩に手を回した。

「すぐそこにタクシー呼んである」
「手際がいいな」
「あ！おい！そこまで手伝う」

円堂くんが駆け寄り出口まで3人並んで歩く。
ありがとう、円堂くん。そうお礼を言えば何のこれしきと笑顔をくれた。すぐに眉が下がり心配そうな表情になった、その一瞬を修也くんは見逃さずに心配するな、とだけ微笑んでくれた。

「A、後はよろしくな」
「うん」

病院へ着くと、すぐに診察してくれた。
待合室で暇つぶしに雑誌を流し読みする修也くん。そんな修也くんに少し肩の力を抜いて、診断書を受け取る。

「ドクター……ストップですか？」

ぱっと、看護師さんを見詰めれば小さく頷いた。
次の診断までは安静に。練習もダメですからね、と念押しされ修也くんをじっと見詰めた。
何故診断が終わったあとに言わないんだこの人は。

ありがとうございます、と痛み止め等を受け取り修也くんの元へ戻る。
雑誌に影が刺して、見上げた修也くんと目が合った。

堪らず、修也くんの額目掛けてデコピンを。

「った……え？」
「安静にだって。しばらく車？」
「……ああ、父さんに声掛けないとな」

雑誌を閉じて、近くの本棚へ戻す。帰ろうか、と松葉杖を立て重い腰を上げる。

「しばらく帰り別だね」
「……え」
「え？車だよね？」

そうだったな、と怪我がショックだったんだろう。
少し心配になる勢いの修也くん……。

「木野さんには連絡したから今日はこのまま帰ろう」

出口でタクシーを呼び止めれば、何も言わずに乗り込む修也くん。
ちゃんと住所言ってね？と声をかければ小さく頷いて。

「……お家まで行ってもいいなら付き添うよ」
「頼む」

いつもより弱気な修也くん。
隣に乗り込めば、住所を運転手さんへ伝えゆっくりと車は動き出した。
ずっと窓の外を見つめる修也くん。

すぐに家に着いたようで、荷物を下ろしてから修也くんへ声をかける。
お金はすぐにお手伝いさんが駆け付けてくれて仮払いしてくれた。

「これ病院の領収書と診断書です。あと、こっちが病院までのタクシー代で……」

玄関先で腰をかけて、お手伝いさんのフクさんへ説明をさせてもらっていると、修也くんが壁に寄りかかりこちらを伺っていた。

「どうしたの？」
「そこじゃなくて、リビングに来い」

フクさんと目を見合わせてお邪魔します、と微笑んだ。