自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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エースストライカーの決心。* ページ24

それからしばらく。何となく約束もしてないけれど、何となく同じ時間に下駄箱に居て。
何となく、待っていてくれて。先導する修也くんの後ろを歩けば河川敷を通って帰る。

「……皆」

校庭が使えないからここで練習してたんだ。橋の上から皆を眺める日々が続いた。
私も、修也くんも、何も言わないけどきっと。
本当の気持ちはサッカーをやりたいって言う、関わっていたい気持ちが今は心に蓄積されているんだと思う。

今日も修也くんは下駄箱で待ってた。
河川敷……行くんだろうな、そう思って、とんっと肩でぶつかって見ればちらりと視線が交じあうだけで歩き出してしまった。

学校では一言も言葉を交わさず、視線も交わらず。ただ、帰り道で同じ時間を何となく過ごすだけ。

橋の上。少し止まって皆を見ていれば、高級そうな真っ黒な車が徐行してきて止まった。
後部座席から顔をのぞかせたのは…綺麗な女の子だった。

修也くんへ話しかけて、あの人たちとサッカーやりたいのでしょう、と。誰が1番サッカーをして欲しいのは誰なのかを訴えかける。

「夕香……！」

修也くんの目には力強い輝きがあって、あの時病院で見ていた揺るぎないサッカーへの思いをその瞳がありありと語っていた。

「悔しいなあ」

そんな本音が漏れた。だって、あの人みたいに私は修也くんを鼓舞することなんて出来なくて。わかっていても、その言葉を口には出来なかったから。

「私は何も力になれない」

そう呟けば、肩の力が抜けたように修也くんは微笑んでくれた。

「お前がそばに居てくれたから腐らずに居られた」
「でも、もう一度って決められたのはサッカー部の皆。円堂くんで…さっきのあの人でしょ」

そんなの、精神論だよ。と唇を尖らせれば肩を震わせて笑いを堪えている。笑うなら思いっきり笑ってください。

「拗ねてるのか」
「べぇつにぃ」

ぷっくりと頬を膨らませては、修也くんを睨み付ける。

「じゃあ、ヤキモチだな」
「なっ…！」

河川敷へと向かう後ろ姿にさらに頬は膨らんで。
なんで、なんで焼きもちなんて。

やかないもん。

頬を両手で押し潰して空気を抜いて。
サッカー部へ入部を決心した修也くんの広くて大きな背中をじっと見つめて。
共にフィールドをかけることも、肩を組んで勝利を喜ぶこともできない私は。

ざああと、耳が雑音に飲まれる。
視界にはあの白黒の砂嵐。

『そんな実力では到底チームには入れないよ』

誰かの冷たい言葉、ぼろぼな服。暗闇に包まれた世界。