自由な君と。- 豪炎寺修也 -

今日:19 hit、昨日:13 hit、合計:27,577 hit

持て余された時間。* ページ3

ㅤ
検査入院。

入院中は勉強しなくていいの？！と喜んだのも束の間で、日頃からの成績を心配したお姉ちゃんが、どっさりと教科書とノートを持ってきてくれた。

「ねえ、お姉ちゃん。私に何泊させる気なの？」

広げられた教科書をそっと閉じて、机の端にまとめる。

「ほーら。明日も朝練あるんでしょ？早く帰ってゆっくり休んで。明日はお母さん来るから、お姉ちゃんは来なくていいからね」

背中を押して、ばいばいと大きく手を振り、心配そうなお姉ちゃんを見送る。
姿が見えなくなるまで手を振り続けて。

「…何してるんだ」
「わあ！えっと、豪炎寺……何君だっけ」
「修也だ」

お見舞い帰りだろうか。ちょっと疲れたような顔だ。
って、制服……？

「その制服って、もしかして木戸川？？」
「そうだが、もしかしておま……中学生か？」
「え…？どういうこと？」

きっと睨みつけるとバツが悪そうに視線を外される。
もしかしなくても。

「ちょっと！こう見えても中学1年生なんです」
「同い年だったんだな……申し訳ない」
「そんなに小さい？標準だと思うんだけど」

唇を尖らせて身長を比較してみる。丁度視線が肩につく。
小さくはない。

「いや、身長ではなくて。挙動が」

あ。そういう事ですね。
よく落ち着きがないって言われるのでいいですよ。

「そう言えば、木戸川だとここからちょっと距離あるよね」
「ん？あぁ……家はそう遠くはないんだ」
「えっじゃあスポーツ推薦？凄いんだねえ」

立ち話を続けて数分。不意に、なんとなく。

「まだ時間あるなら座って話さない？」
「そう……だな」

時計をちらりと見て少しだけなら、と抵抗もなく病室の中へ。

「結構ね、やる事もなくて1日暇でしょうがないんだ」
「なんだ、ちゃんと勉強してるんだな」
「それはお姉ちゃんが持ってきたやつだよ」

ぱらぱらと教科書をめくっては、少し考えるような素振り。
じぃと、観察すればよくわかる。修也くんはイケメンの部類に入る。

「あ、なにか飲みますか」

思い出したように、じゃん。と冷蔵庫を開けると並べられたペットボトル。お菓子。

「いや、今日は遠慮しておく」

長居する気は無いのだろう、教科書をそっと置いては鞄をかけ直していた。
一つ一つの動作がエフェクトかかったように様になるのは顔のせいかな。

「なにかついてるか？」

凝視しすぎたようで不審がられてしまった。

「ううん。イケメンだなあって思って」

素直な言葉に、修也くんは眉を潜める。
ㅤ