自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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それは始まり。* ページ17

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円堂くんを潰すことを目的としたそのプレーを止められる人なんて誰もいなくて。

「冬海先生、タイム…取らないんですか」
「えっ？！ええ……」

視線を泳がせてしどろもどろな先生。
監督ではなくて、あくまでも顧問でしかない、そう前に誰か言っていたけ。

「こんなのサッカーじゃない！」

風丸くんが突然飛び出して円堂くんを庇った。

代わりにネットに跳ね飛ばされてしまって。2人で支え合いながら立ち上がる。
絶対に決めさせない。守る。そう、強く言葉にした円堂くんの言葉はしっかりとここまで届いた。

必殺技のシュートが来る。

眩い光を放ちながら、ネットに跳ね飛ばされてしまう……。円堂くんまで倒れてしまって、最後に立っていたのは目金くんだけだった。

悲鳴をあげながら敵前逃亡したその人は、あろう事かユニフォームを脱ぎ捨てていった。

エースストライカーの大切な。

皆がグランドを見守る中、脱ぎ捨てられたユニフォームを取りに行く。

「まだだ！まだ……まだっ終わってねえぞ……」

振り向くと、円堂くんはまた立ち上がって何度も、何度でも浴びせられるボールに耐えていた……。

「修也くん……」

ユニフォームの傍には修也くんがいた。
円堂くんの声に決心したようにその10番を見詰める。

「夕香……」

小さな声で呼ばれたのは夕香ちゃん。

「今回だけ……お兄ちゃん……許してくれないか」
「大丈夫だよ、きっと」

そこに私が居たことなんて気付いてなかった修也くんは少し驚いた表情。

「夕香ちゃんのことも、修也くんのことも。まだ何もわかんないし知らないことばっかりだけどさ……」

修也くんが、夕香ちゃんのこと大切にしてるの凄く伝わる。
きっと、夕香ちゃんもお兄ちゃんのこと大好きだよ。

だから、

ユニフォームを掴み、力強く頷いた修也くん。

20点目のゴールのホイッスルが鳴り響いた。

エースストライカーのユニフォームを背負った修也くんの背中。
初めてみる背中なのに、なんだか無性に嬉しくて、もう大丈夫。そんな言いようのない安心感と、胸を焦がす何かを掻き立てられる。

人の合間を抜けて、グランドへ向かう。

修也くんの乱入を帝国学園はなんの抵抗も違和感も、不信感もなく受けてれた。
制服を持ってベンチへ戻ると、円堂くんの肩を支えている修也くんが見えた。

「遅すぎるぞお前、」

そんな円堂くんの言葉に修也くんは微笑んでくれた。そんな2人をみて、皆が立ち上がる。皆もわかってるんだ。

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