其の捌 ページ8
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有象無象は迫り来る。
すぐに臨戦態勢をとる三人に、櫻井は叫ぶ。
「戦っても無駄だっ！」
その声に動きを止める三人。
「え？」
「何言ってんだよ」
「どうしたの？」
問いかけを無視し、櫻井はスミシロを見つめる。
「スミシロ。これはお前の幻覚だな」
スミシロはクスリと笑う。
「やっと気付いたの？随分と時間がかかったじゃない。気付かずに必死で戦うなんて、滑稽だったわ」
三人は信じられないといった表情でスミシロを見つめる。
櫻井が感じた違和感。
減らない敵も、湧き出る敵も、幻術であるなら説明がつくし、納得できる。
「ここも、お前が作った幻覚か？」
「違うわ…ここは彼が作った、彼の為の、彼だけの世界」
「世界？」
スミシロが愛しそうに目を細める。
「そうよ。彼以外、この世界を染めることはできない。ああ、貴方たちの世界もそうだったわね」
「お前は、何者なんだ？バグって、なんなんだ？」
スミシロが少し俯く。
きっと、その仮面に隠された顔は悲しみを浮かべているのだろう。
「…そのままの意味よ。私はバグ。手違いで生まれた、彼に作られた存在。でも彼は、ちゃんと私を愛してくれる。抱きしめてくれる。柔らかく微笑んで、撫でてくれる。強請れば口付けだってしてくれるわ。その先だって、ちゃんと、してくれるのよ」
スミシロが手を上に上げる。
「彼はどんな我が儘も許してくれるの…お礼は態度で示すべきよね？」
スミシロは空気を吸い込み、言霊を紡ぐ。
「イロドリノカミの眷属たる我が真名をもて、封印を解きたまう。我が名はハクア!!《神々の始祖》の血を継ぎし者!!」
白い光が、放たれた。
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作者名：諦兎 | 作成日時：2014年5月25日 0時
