過去と忘却 ページ25
「え、えっとそれって…… まさか、プ、プロ……、えっ!? い、いつからそう思……?」
「……あの時です。貴女が、私を助けてくださった、あの日から。私は……」
「『助けてくださった』……? 何の話? むしろ、助けてくれたのはクラマだったでしょう?」
初めて会ったのは、あの不良に襲われていたときだったはずだ。彼は何の話をしているのだろうか。
「もしや、貴女は覚えてないのです?」
「覚えて、って言われても……」
幼い頃の記憶は、受験のための猛勉強のせいでほとんどと言っていいほどない。ただ、さっき川に落とされたときは、昔のことを思い出した。
私は、祖母の田舎に行ったとき、まだ妖怪として弱かったサゴジョウと出会っていた。その他は、何かあっただろうか……
「………………………」
「……あの、A?」
「ごめんなさいクラマ。私、やっぱり昔のサゴジョウのこと以外はほぼ覚えてない。わからないの」
思い出そうとしても、頭がぼーっとしてしまう。難しそうだ。
なんだか申し訳なくてしょんぼりとした気持ちになったけど、クラマは優しく頭を撫でてくれた。
「いいんです、私は今の貴女といるだけでも幸せですから」
「……っ」
分かってて言ってるのか、天然なのか。それって女子が言われるときゅんとくる言葉ランキング入ってそうじゃない?
ああ、それは別にどうでもいいか。今私がちょっとどきっとしただけだからね。
「そ、そういえば、いつ人間界に戻れるかな」
気まずい今の気持ちを隠すように、少し上ずった声で聞いた。
「ああ、すみません。あと一ヶ所案内したいのですが大丈夫ですか?」
「……うん。楽しみにしてるね」
花火も終わったので、私たちは部屋に戻った。何も話すことなく。でも、帰るときに握られた手は暖かかった。
結局、
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日、目覚めてから朝の支度を終え、サゴジョウに挨拶をしに行ったところだった。
「お世話になりました、サゴジョウさん。一日だけだったし、出会いはちょっと散々だったけど楽しかったです」
「ん? お前何言ってんだ?」
「私、今日でここを去るのでご挨拶をと思って。もう会えるか分からないし」
「あー…… クラマあいつ、お前に話さなかったのか? 次ん所はオレもついてくんだよ。オレもお前らと行くんだよ」
「……はっ?」
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