崖っぷち ページ21
しばらくダラダラしてると、襖を軽く叩く音が聞こえた。私の客間を、誰が訪れるのだろうか？
クラマかな、と思い襖の突っ張り棒をどかして開けると、ミカヅキがいた。腕を組み、不機嫌そうな顔をしている。
「……あの、何か御用でしょうか」
「あなたに会いたいって河童がいるの。だから私についてきなさい」
それだけ言うと、ミカヅキはどんどん進み始めた。本当に私には無愛想だな、なんて思いつつおとなしく付いていった。
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ミカヅキについていくと、昼間向かった川の付近の崖に着いた。どうやらここに、私に会いたい河童がいるらしい。
「ミカヅキさん。その河童さん、どこにいるんです？」
すっかり日は落ちているため、だんだん暗くなってきている。昼間あれだけいた河童もいなくなっており、これではもし川に落ちたら危ないのでないだろうか。
「………………………」
「ミカヅキさん？」
ミカヅキは下を向き、黙りこんでしまった。何か気に障ることを言ってしまったのだろうか？
「あの…… もしかしてミカヅキさん、私に嫉妬されてます？ 私がサゴジョウさんと一緒に行動してたりしたから。でも……」
ああ、私はそこそこ勉強ができるが、言葉選びが下手な所がある。今の発言も、ミカヅキの怒りを買うには十分すぎるものだった。
と、頬をひっぱたかれた後に気がついた。衝撃で座りこんでしまう。ものすごく痛く、ひりひりとする。すでに、赤く腫れてきたかもしれない。
頬をおさえミカヅキを見ると、ぎらぎらとした恐ろしい目で私を睨んでいた。鼻息荒く、顔を真っ赤にしている。
「……、……！！」
どうやら、ものすごく癪に触ったようだった。これはまずい。何とか、そんなつもりではなかったという事を伝えなくては。
近くの木を掴み、立ち上がる。
(あれ、そういえば後ろ崖だった。危ないな、横にずれておこう。)
でも、ふらふらする。
どうにか立ち上がり、彼女を見た。多少バランスが取れたので、木から手を離す。……が
体がふわりと浮く。その感覚に驚き、足元を見る。と、本当に浮いてる。
……まさか私、落ちてる？
驚いて再びミカヅキを見ると、両腕を突き出している。彼女、もしかして、私を…… 突き落とした？
「―――！！」
一瞬で顔が青ざめた。手を必死に伸ばすけど、空しか掴まない。
重力には逆らえず、私の体はそのまま、川に勢いよく落ちた。
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