検索窓
今日:10 hit、昨日:5 hit、合計:7,007 hit

修学旅行 ページ3

冷めた目の私は、机から本を取り出して読み始める。キョウトの、鞍馬天狗の話だ。この話がお気に入りで、小さい頃からずっと読んでいる。

天狗と人間の少女の、切ない恋愛話… 私が妖怪に少し惹かれているのは、この本の影響もあると思う。

「…妖怪、会いたいな。」

私は、誰にも聞こえないように、小さな声で呟いた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「皆いるなー? 出発するぞー!」

まだ早朝だというのに、クラスの皆は元気だ。楽しそうに喋り、バスの中はざわざわしている。

私の席は、横に誰もいない。別に構わないのだが、先生が妙に憐れむような目で見てきたのが少し腹ただしかった。

座っているのが窓側の席なので、空席に荷物を置き、そのまま目を閉じた。バスでレクリエーションをやるようだが、眠くてそれどころではない。

再び目を開けると、目的の駅の近くだった。目を擦りながら、荷物を手に取る。もうそろそろ新幹線に乗るのだろう。

その後駅に入り、新幹線に乗り込んだ。また一人だが、たいして気にせず、今度は窓の外を眺める。辺り一面田んぼで、美しかった。

ぼーっとしていると、噂話が聞こえた。

「ねぇ、今キョウトにあの“梁鬼族”が来てるらしいよ?」

「え! あの、女の子を無理やり連れ去ったり、気に入らない人を叩きのめす悪集団が?」

梁鬼族の噂なら、私も知っている。印象としては、あまりよくない集団としか思ってない。やってることもろくでもないからだ。

(まあ、可愛い子しかさらわない様だし…)

私には無縁だ、と思いたい。なにせ、世の中何があるか分からない。しばらく窓の外を眺めていると、キョウト駅に着いたようだった。

有名なお寺や神社をお詣りした後、宿についた。夜は近所で肝だめしまでやるらしい。怖いものは平気だが、皆で騒ぐのは嫌だ。

でも、どんな風に行うのか興味があって参加はすることにした。

暗くなってから集まり、説明を聞く。どうやら、商店街で行うらしい。一直線だし、分かりやすいからだろう。少し拍子抜けしたが、まあいい。

まず、ひとつ目のグループが出た。絶叫する声に怯える子や、楽しそうに笑う輩もいる。…私は、一番最後だった。

その後も順調に進み、私の番になった。あまり話さない人たちと同じになり、その子らは前を歩くが、私は後ろの方を歩く。近くを歩いて変に気を使われるのも面倒だ。

修学旅行→←修学旅行



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
5人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紅ゆずりは | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年9月5日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。