修学旅行 ページ3
冷めた目の私は、机から本を取り出して読み始める。キョウトの、鞍馬天狗の話だ。この話がお気に入りで、小さい頃からずっと読んでいる。
天狗と人間の少女の、切ない恋愛話… 私が妖怪に少し惹かれているのは、この本の影響もあると思う。
「…妖怪、会いたいな。」
私は、誰にも聞こえないように、小さな声で呟いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「皆いるなー? 出発するぞー!」
まだ早朝だというのに、クラスの皆は元気だ。楽しそうに喋り、バスの中はざわざわしている。
私の席は、横に誰もいない。別に構わないのだが、先生が妙に憐れむような目で見てきたのが少し腹ただしかった。
座っているのが窓側の席なので、空席に荷物を置き、そのまま目を閉じた。バスでレクリエーションをやるようだが、眠くてそれどころではない。
再び目を開けると、目的の駅の近くだった。目を擦りながら、荷物を手に取る。もうそろそろ新幹線に乗るのだろう。
その後駅に入り、新幹線に乗り込んだ。また一人だが、たいして気にせず、今度は窓の外を眺める。辺り一面田んぼで、美しかった。
ぼーっとしていると、噂話が聞こえた。
「ねぇ、今キョウトにあの“梁鬼族”が来てるらしいよ?」
「え! あの、女の子を無理やり連れ去ったり、気に入らない人を叩きのめす悪集団が?」
梁鬼族の噂なら、私も知っている。印象としては、あまりよくない集団としか思ってない。やってることもろくでもないからだ。
(まあ、可愛い子しかさらわない様だし…)
私には無縁だ、と思いたい。なにせ、世の中何があるか分からない。しばらく窓の外を眺めていると、キョウト駅に着いたようだった。
有名なお寺や神社をお詣りした後、宿についた。夜は近所で肝だめしまでやるらしい。怖いものは平気だが、皆で騒ぐのは嫌だ。
でも、どんな風に行うのか興味があって参加はすることにした。
暗くなってから集まり、説明を聞く。どうやら、商店街で行うらしい。一直線だし、分かりやすいからだろう。少し拍子抜けしたが、まあいい。
まず、ひとつ目のグループが出た。絶叫する声に怯える子や、楽しそうに笑う輩もいる。…私は、一番最後だった。
その後も順調に進み、私の番になった。あまり話さない人たちと同じになり、その子らは前を歩くが、私は後ろの方を歩く。近くを歩いて変に気を使われるのも面倒だ。
5人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ