河童らしく ページ20
次にサゴジョウが案内してくれたのは、森の真ん中にある林、大きな川だった。森、と言っても迷うような所ではなかった。
本当に立派な川で、思わず、横幅だけでも私が何人ほど寝転べるだろうか、なんてくだらないことを考えた。
たくさんの河童が水浴びや魚捕りをしており、もちろん賑わっているようだった。所々、河童以外の妖怪もいる。
「観光客が沢山。有名、なんですねここ。のどかで、とってもいい雰囲気…」
「はい。でも川の水はあまり飲まない方がいいですよ。河童が泳いでますから」
クラマは、くすりと笑う。そんな彼を、サゴジョウは睨み付けた。
「おいクラマテメェ、余計なこと言うなよ」
「フフ、何かAに知られて困ることでも？ サゴジョウ」
「………………………」
何も言い返せない所を見ると、私に秘め事があるらしい。別に本人が言いたくないなら、無理に知ろうとは思わないのに。
なんだか気まずく、話題提供をして話をそらした。
「ここ、どんな魚が捕れるんです？」
「…人間界の川魚と変わんねぇよ。お前は賢そうだから平気だと思うが、川は深いところがあるから入んなよ」
「…そうですね。私は泳ぐの得意じゃないので、そうします」
私は川や海を見るのは好きだ。流れ行く水を見ると、心が落ち着く。
だけど、入るとなると話は別だ。何故か、いざ入ろうとすると怖くて、震えがくる。体が拒否するのだ。
「ふうん…」
サゴジョウは私を見て、何か考え始めたようだった。それでしばらくして、「そろそろ帰るか」なんて言い出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「サゴジョウ様、お帰りなさいませ」
城に戻ると、ミカヅキが私たち、もといサゴジョウを出迎えた。白いワンピースが揺れ、紫檀の髪が艶々となびく。
「ミカヅキ、クラマとAを客間に案内しとけ。別室でな」
「…承知しました お二人とも、ついてきてください」
ミカヅキはサゴジョウに礼をした後、私たちに向き直る。が、私を見る目はどこか厳しかった。
ミカヅキに案内された客間は、一人で過ごすには丁度良い広さだった。クラマと別室なのはサゴジョウなりの気遣いだろう。
ベッドに寝転び、修学旅行に来てからどれくらい経ったかを指折り数えた。
２日間人間界の散策をし、夜に天狗の森に来て、１日経ってからさらに河童の湖まで…。
今日でだいたい四日めだろうか。なんとも言えない。まあ、学校の人たちは私がいなくてもあまり気にしてないと思うけど。
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