観光…？ ページ12
私にできることはあるのだろうか。私は、この世に必要なのだろうか。いつもうじうじ考えてしまい、そんな自分を嫌悪してしまう。悪循環だ。
気分が沈み俯いていると、ぽんと頭の上に手を乗せられた。上を向くと、クラマが私の頭に手を乗せている。
「…？」
「A」
クラマは私の頭を撫でる。大人の男性らしい大きい手は、妙に安心した。父を思わせるからかもしれない。
「そんな風に自分を下げてはいけませんよ。大きな問いの答えは、すぐ見つかるものではありませんから。
貴女はまだ若い。生きていく理由など、これからいくらでも見つかりますよ」
そう言って、優しく笑った。目を細め、口角を上げたクラマの笑顔はとても美しかった。
ぼおっと、頬と耳が熱を持っていくのを感じた。何だかこそばゆくなり、彼から目をそらす。
そんな私を見て、また笑うクラマ。不思議だ、出会ってそんなに経ってないはずなのにもう昔から知り合っているような感じ。
私も笑いかけると、なんだか可笑しくなってきて二人でしばらく笑っていた。
笑い終え息が切れると、二人とも涙目になっているのがまた可笑しくてふき出してしまった。
ああ、面白い。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クラマの暮らしている城に戻ると、また先程の女性、冬椿が廊下を不自然にうろうろしていた。何をしているのだろうか。
こちらを見ると、ぱあっと顔を明るくして駆けてきた。いや、こちらではなくクラマだろうか。クラマに抱きつきそうな勢いなので、私は少したじろいだ。
「クラマ様…！ お帰りなさいませ。」
「ただいま戻りました、冬椿。」
そういえば、冬椿はクラマの婚約者候補だと言っていた。クラマは婚約者は自分で決めたい、と断ったと言っていた。
「クラマ様、お食事にしますか？ お風呂に致しますか？ えっと… それとも…」
冬椿は顔を赤らめ、何か言葉を期待するかのようにクラマを上目遣いで見た。だが彼女は背が高いため、クラマは気づいていなかった。
「冬椿、どれも大丈夫です。少し彼女にここの案内をするので、貴女はそろそろ帰られてはどうですか？
毎日ここに来ているのは何か理由があるのかもしれませんが、貴女の時間も大切にしなさい」
「!!! …はい」
冬椿は目を見開き、くるりと後ろを向いた。それにあわせて、彼女の腰まである長い黒髪が、くるりと動く。
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