修学旅行 ページ2
教室に響き渡る、黒板にチョークで文字を書く音。先生は、修学旅行についての注意を箇条書きしている。
「…それと、班行動は乱すなよ、くれぐれも一人で行動することなどがないようにな！」
そう言う先生の声を、皆楽しそうに聞いている。ぼんやりと聞いているのは、私―
目線は黒板に向けているものの、端から見ると目の焦点が合ってないと思う。私は、修学旅行が憂鬱で仕方がない。
私の通う私立中学は、三年間クラスが変わることはない。だから、一年生の時に皆グループを作り、それで定着してしまっている。
私はそれに乗り遅れたせいで、友達がいない。たまにクラスメイトと話すことはあるけど、会話は長く続かない。
大抵、一言二言話して終わってしまう。
この間、教室に忘れ物を取りに行ったときに、聞いてしまった。
『Aさんてさ、暗いよね？』
『ね！ 何考えてるのか分かんないよね。なんかさ、妖怪とか好きそうじゃない？』
『確かに！ 前そういう本読んでたしw 今時、ほんとにいるって思ってるのかね？』
忘れ物はどうしても必要だったので、そのときの私は、空気を読まず扉を勢い良く開けた。
その二人はハッとしたようにこちらを見てきたが、目を合わせたらすぐに顔をそらした。
その後忘れ物を手に取り、何事も無かったかのように家に帰った。私は、部活動にも所属していない。
悪口を言うなんて、よくあることだ。しかし、私は無性に腹が立った。私の悪口ではなく、“妖怪なんていない”と否定された所だ。
妖怪はいる。私は、幼い頃から自然とそう思っている。何か出来事があった気がするのだが… 全く覚えていない。
何も知らずに私の噂話をする輩と、無理やりにまで仲良くする気はない。だが、友だちがいないのはグループワークとかだと厳しい。体育はなおさらだ。
いつも強情な自分に呆れながらも、これで良いとは思っている。どうせ、高校は別のところに行くのだから。
必ずいるとは思わないが、自分の事を理解してくれる人を探すつもりだ。それまでは… 耐えるか。
私立中学に通っていて、成績もそこそこいい方だがこういう事を考える頭は悪いなぁといつも思う。
それに… 帰ったら修学旅行の準備をしなくては。私は、そっとため息をついた。
気がつくと、先生の話は終わっていた。皆、修学旅行先のキョウトに行ったら何をするかを楽しそうに話している。
あーあ、みんなリア充だな。羨ましい。
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