神様、みつけた≪2≫ (ページ8)

今日:15 hit、昨日:5 hit、合計:7,456 hit

第57話ページ8

その後も、Aは慣れた手つきでご飯をつくり、取り急ぎ身体を温めるようにとココアまでいれてくれた。

「実はお母さんが体調崩しやすくて……いつも看病してるからある程度の知識はあるつもり」

「お母さんが……」

思いがけず飛び出したAのお母さんの話題に、ドキリとする。

「大会にも、お母さんはいらっしゃるの？」

本当は知っていたけど、あえて知らないふりをした。

それに、自分がAのお母さんにAのダンスを見て欲しいといったあの日から、二人の間に何か進展があったかもしれないとも思った。

「ううん。来ないよ。……そもそも、私がお母さんにダンスをしてることは秘密だから」

それからAはぽつりぽつりとお母さんとの関係を話してくれた。

拳を握り締めて、どうしていいかわからなそうに眉を顰めて話すその姿に、あの日屋上で初めて出会ったAの姿を思い出した。

そっと触れてしまったら、今にも消えてしまうんじゃないかとさえ想像する儚さ。

そして、その中に潜む深い熱。

「ここまで育ててきてくれたのは他の誰でもないお母さんだし、お父さんがいない今お母さんのいうことはよくわかるの。……でも、やっぱりずっと自分のやりたいことを否定され続けるのが怖かった」

苦悩を抱えながらも、ひたむきに日々屋上に通っていた彼女の姿が浮かぶようだった。