最終話 ページ33
「……そうだ、A。俺のお願いを聞いてくれる？」
「お願い？いいよ、聞かせて」
「楽譜を探してくれない？」
「楽譜？」
「なくしてしまったんだ」
シャオジュンは微笑む。
私は頭にはてなマークを浮かべながらも、辺りを見渡した。
まるで出会った時のようなことを言うけれど、彼は私とずっと一緒にいたし、楽譜なんてここでなくすはずもない。
どうしていいかわからず、辺りに彷徨わせていた視線を再びシャオジュンに向ける。
「みつけた」
シャオジュンは私に向かってそう言うと、両手で私の頬を包み、優しく唇にキスをした。
「楽譜は俺の生きる理由みたいなもの。……ここであの日みつけたんだ」
シャオジュンの指は、愛おし気にゆっくりと私の頬を撫でる。
「俺はAと一緒に夢を歩いて、いろんな世界を見て、Aのためにこれからもずっと生きていきたい」
ふと離されたシャオジュンの手を惜しむように、頬は熱を帯びている。
「俺と、結婚してください」
シャオジュンは、ポケットから小さい箱を取り出してゆっくりと開けた。
「っ……！」
中にはきらきらと一等星のように輝く小さな指輪。
「あ、シャオジュナ……っ」
「泣いてくれるの？」
何故か、目の前のシャオジュンの優しい笑顔を見れば見る程涙が零れた。
「私でよければ、ずっと一緒にいてください……っ」
シャオジュンがくれた指輪の箱を受け取って、いよいよわんわんと泣き始めてしまった私を、シャオジュンは温かく抱きしめてくれた。
それからシャオジュンは指輪をとって、ゆっくりと私の指にはめてくれた。
本当に綺麗だ。
「綺麗だ」
私がそう思うのと同時にシャオジュンの声が聞こえて、シャオジュンは私の指にキスをした。
それが世界一の王子様に見えて、同時に私は世界一の幸せ者だと思った。
「A、愛してる」
「私もだよ、愛してる。シャオジュン」
ひとりぼっちで戦っていたあの日の屋上。
おまじないを唱えたら、
愛する君を、みつけた。
Fin.
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作者名：もちこ | 作成日時：2023年12月29日 22時
