神様、みつけた≪2≫ (ページ20)

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第69話ページ20

「A！」

歌のコンクールを無事終え、俺は大きすぎる優勝トロフィーを応援に来てくれていたヘンドリーに預けて、一目散に会場を飛び出した。

急遽開催場所が変えられた都合で、今回のコンクールは通常より早い開催時間で行われた。

そのおかげで、もしかしたらAの大会に間に合うかもしれなかった。

俺からAまでの距離はそう遠くはない。

下手にタクシーを拾うよりも走った方が早いと判断し、無我夢中で駆け抜けた。

コンクールは自分でも驚くくらい楽しいものだった。

なんというか、今までのプレッシャーだとか緊張感だとかそういうのを抜きにして、純粋に歌うことを楽しめたのだ。

舞台に立つことがこれほど楽しく、自分を奮い立たせてくれるものだとは思わなかった。

新体験だったのだ。

脳裏には、Aの姿があった。

羽のように、純粋な楽しさだけを乗せて踏む軽やかなステップ。

彼女に手を引かれたかのように、自分もその境地を覗いた気がした。

もっと大きな舞台に立ってみたい。

そんな夢が、密かに自分の中で芽吹くのを感じた。