第63話 ページ14
＿＿それからお母さんは、偶然シャオジュンと出会ったこと、彼が助けてくれたこと、彼が私のダンスを咎めることに対してきっぱりと”違う”と言ってくれたことを話してくれた。
……そして、お母さんの命が限られていることも。
「……嘘でしょ」
「……ごめんなさい」
申し訳なさそうにただ謝る母は、もう私をずっと咎め続けた恐ろしい母ではなかった。
こんなに小さかったかと感じるくらい、弱々しく存在する一人の人間だった。
「……正直、まだ全部を受け止めきれたわけじゃないけど……一旦、お母さんがどういう気持ちで今までいたのかはわかったよ」
「Aが不自由なく暮らせるようにするために、心を鬼にして支えなきゃと思っていた。だけど、私は本当の鬼になってしまった。Aの気持ちを考えない、むしろ不自由にしていた鬼」
「この際だから、私もはっきり話すね。……お父さんがいなくなってから、お母さんだけが唯一の家族だった。だからお母さんの気持ちもわかったし、それに答えたいと思った」
鼻の先がツンと痛む。
正直に話すということが、こんなにも難しかったか。
「でも、お母さんが私のダンスの大会のトロフィーを全部捨ててしまったとき、私たちはそれまでとは全く別の道に行ってしまったんだと思う」
お母さんは、黙って聞いてくれている。
涙が目に滲んでいるのは、お互い様のようだ。
「それでも、たった一人の家族だからずっと大切だったよ。だからダンスをしながらも勉強はずっと頑張ってきた。でもやっぱり学校の勉強はだんだん難しくなるし、そのたびにお母さんに叱られた。だから、自分が何をしたいのかすらもわからなかった」
ダンスは最早、最後の砦だった。
きっとダンスさえ手放さなければ、何者かになれる気がしていた。
そうでないと、生きていけなかった。
「ダンスを否定されるのは、私自身を否定されているみたいで辛かった」
握った拳に、ぐっと力が入る。
「でも私はやっぱり、ダンスを諦めたくなかった。お母さんに否定されようとも、屋上で一人踊り続けることになっても、踊り続けたかった。全部私がやりたくてやったの。それくらい、ダンスがしたかったの。……それだけは、お母さんにわかってほしい」
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作者名：もちこ | 作成日時：2023年12月29日 22時
