神様、みつけた≪2≫ (ページ12)

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第61話ページ12

「ああっ、Aさんのお母さんですか。……初めまして。Aさんとお付き合いさせていただいてます。シャオ・ダジュンです」

狼狽え切った私をよそに、シャオジュンは明るく挨拶をしてくれている。

しかし一方で、私はお母さんのことなど見れるわけもなかった。

ダンスすら許さない母が、恋愛など許すはずもない。

「はじめまして、ダジュンくん。……うちの娘がお世話になっております」

ぎゅっとスカートを握り締め、冷や汗をかきながら地面を見つめていた視線を、思わず母に向けた。

予想とは全く声色、発言だったからだ。

まるで、お父さんが生きてた時みたいに、優しい声。

そういえば、練習や勉強に託けてほとんどを外で過ごしていたせいで、お母さんの声をまともに聞くこと自体久しぶりだと思った。

「じゃあA、俺はもう帰るね。……明日は俺のコンクールと被って応援に行けなくなっちゃったけど、きっとAを応援してくれる人が傍にいるから大丈夫だよ。思いっきり踊ってきてね」

帰ったらまた連絡するよ、ってシャオジュンは勢いよく帰ってしまった。

まるでシャオジュンの他にも応援しに来てくれる人がいるみたいなそんな言い方をして。

クンオッパは明日は模試があるから前々から来れないと言っていたし、親友のソアだって絶賛例の風邪をひいてしまい家でダウンしている。

言葉の綾的なものかと自分の中で解決させながら、シャオジュンも頑張って！と走って帰るその後ろ姿に告げた。

夜道でもきらきらと輝くその振り返った笑顔を見るだけで、やっぱり神様みたいだと思うのだ。

「……A」

お母さんに自分の名前を呼ばれて、はっとする。

そうだ、今シャオジュンは私が踊るって言ったんだ。

ダンスをしていることがバレてしまう！

「A、少し話をしましょう」

やっぱり、私は母の顔を見ることが出来ない。

もしかすると明日の大会すら出れなくなるかも、なんて思って一気に冷や汗が噴き出す。

そんなの嫌だ、今すぐ家を出てしまおうか？……そんなことを脳ではけたたましく考えているのに、何も口にすることが出来ないまま母の背中について家に入り込むことしかできなかった。