流星群 (ページ6)

今日:24 hit、昨日:29 hit、合計:38,885 hit

- ページ6

-

「終わりました！お疲れ様です。」
「ありがとうございます。」
「・・・あの、Aさん。」

メイクが終わって、椅子から立ちあがろうとした瞬間、声をかけられる。鏡越しに高島さんの顔を見る。言いにくそうに噛み締められた唇。唇を噛むのが彼女の癖なのか。

「Aさん、私、森本さん・・慎ちゃんとお付き合いさせてもらってます。」
「あー、はい。・・聞いてます。」
「慎ちゃんとAさんが仲良いのは知ってます。でも、これからは2人で会うの、やめてもらえませんか。」

こういうのも初めてじゃない。ていうか何回も、飽きるほどに言われてきた。恐らく慎太郎も、彼女に「幼馴染と会うのやめて」とか言われたことはあるだろう。慎太郎がどう返しているのかは知らないけれど、私は毎回「無理」と答えてきた。幼馴染のポジションでしかいられないなら、せめて幼馴染のポジションの酸いも甘いも味わわせてもらわないと割に合わない。

ーいつまで続くんだろうなあ私のこの一途さ。

ふと、自分の言った言葉が浮かんだ。いつまで続くんだろう。いつまで、幼馴染の酸いも甘いも味わっていかなきゃいけないんだろう。今は慎太郎のそばにいることが私の幸せって思ってるけれど、もしかしたら忘れた方が幸せなのかもしれない。全部忘れて、違う誰かを好きになる。今まで、そんな選択肢もあるってこと、気づかないようにしていた。ずっとそばにいたかったから。

昔見た映画で登場人物が言ってた、『愛とは執着を手放すこと』だって。大切にしていたこの想いが、自分の手で段々と穢されて、ボロボロになっていくような気がした。実らないなら、綺麗な想いのまま、静かに終わらせた方がハッピーエンドなのかもしれない。私は、好きな人と幸も不幸も分け合うことができないのだから。

唇を噛み締める高島さんを鏡越しに見ながら、ぽつりと「わかりました。」と溢した。