流星群 (ページ18)

今日:27 hit、昨日:29 hit、合計:38,888 hit

- ページ18

-

「お、森本君、田中君。お疲れ様。」
「お疲れ様ですー！この間はありがとうございました！」
「実は僕たちこれで仕事終わりなんですけど、ご飯連れて行ってくださいよー！！」

にこにこと人当たりのいい笑顔を浮かべながら、さりげなくディレクターさんと私の間に体を割り込ませる慎太郎と樹。ディレクターさんの笑顔が引き攣って、「あーまた今度ね！Aちゃんも、また！」と足早に立ち去っていく。その姿を見て下心しかなかったのかと、わかってはいたけれど落胆した。はぁ、と安堵か落胆かわからないため息を吐くと2人がこちらを振り返る。

「酒井さんは？」
「急用で本社。だから助かった、ありがとう・・。」
「・・送ってく。」
「いいよ、タクシーで帰るから。」
「雨降りそうだし慎太郎に送ってもらえよ！俺らもこれで終わりだから。」
「低気圧で体調悪いんだろ。俺今日車だし。ちょっと待ってて。」

そう言うと、少し離れてどこかへ電話をかける慎太郎。それを呼び止めるように「でもっ」と言っても、樹に「うるさいうるさい、送られとけ。」と、眉間を指でぐりぐりと押されながら軽くあしらわれた。そうされて、自分が眉間に皺を寄せていたことに気がついた。しばらくすると電話を終えた慎太郎が私の方へ来て、行こうと声をかけてくる。

「え、樹は？」
「俺はこの後予定あるから。ほら、はやく行け。」

背中を押されて、後ろを振り返ればヒラヒラと手を振る樹。こいつ、と思いながらも押された勢いで前に出た足をそのまま止めることができなかった。

ー右手で車のキーを弄ぶその後ろ姿を見たのは随分久しぶりだった。前は仕事現場まで送ってもらったり、色んなところに行ったななんて、車のキーに付いているいつか私があげた変な顔をしたクマのキーホルダーを見て思い出していた。