第二十五話:夢の中 ページ32
お菓子のお城から飛び出し、森の中と奥深くへと進んでいく。
だが、逃走なんてものはそう上手くは行かない。
『っ…目眩が…』
三日間薬漬けにされたという事実はかなり重く、
体から薬が出るまでそれ以上の期間を有する。
そんな人間が、逃走を図るなど無茶だ。
次第に私は空を上手く飛べなくなり、木に激突する
背中を強く打ち付けて、地面に倒れ込む。
『……駄目よ…今はまだ…』
そのまま視界が暗転していき、私は意識を失った。
… … …
混濁する意識の中、私は夢を見ている気分だった。
「…意識障害を起こしてる…」
「…このままだと…二度と目を覚まさない…」
可愛らしい動物が、私の体に寄り添う。
花畑の真ん中で、沢山の動物達が私を見ている。
ここには青空と、花だけ。
とても気分が良かった、このままずっとここに居たいと思った。
暫くすると、
何故か私は母さんの膝に頭を乗せていて、優しく頭を撫でられていた。
周りを見ると、幼い頃の兄弟が同じ様に寝ていた。
私に笑顔を向けて、手を握ってくれる。
「これがAの夢？」
『……うん。』
身近にありそうで、私には程遠い幸せ。
傷付けて、傷付けられて。
それでもまだ、それを願っている。
歪んだ愛情しか向けられない、私達。
こんな幸せがあるのなら、夢だわ。
「…本当に？」
母さんは私を愛してくれた。
レイジュやサンジ、ヨンジも私を大切に想ってくれている。
父さんや、イチジや、ニジだって、
歪んではいるけれど愛に変わりない。
それでも、
私には足りないの。
あなたがいないと、何をしても満たされない。
私は決して満たされない。
『…』
「…A、来た道を戻りなさい。きっとそこに、貴方が求めるものがあるはずだから。」
母さんは立ち上がると、私の手を引いて最初にいた花畑へと歩き始める。
いつの間にか辺りは雨が降っていた。
動物達も居なくなっていて、ここには母さんと私しか居ない。
母さんは花畑が終わる所で足を止めた。
花畑の先には、険しい道が続いている。
「一人でよく頑張ったね、A。さぁ行っといで。」
母さんは力強く私の手を引っ張ると、花畑の先へと押しだした。
それはまるで、夢に向かって一歩を踏み出せるようにと背中を押してくれたように感じた。
『…ありがとう母さん。』
この先の道を、大切に踏みしめていこう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1246人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒山羊(プロフ) - 瑠璃さん» コメントありがとうございます！最後までありがとうございました！ (2022年10月30日 0時) (
レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 完結お疲れ様です❗とても良いお話でした(*´∀｀)素敵なお話ありがとうございました❗ (2022年10月29日 23時) (レス) @page50 id: 6c259301f0 (このIDを非表示/違反報告)
黒山羊(プロフ) - kyokunarebaさん» コメントありがとうございます。嬉しいお言葉です！最後までありがとうございました！ (2022年10月29日 19時) (レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
kyokunareba(プロフ) - 完結お疲れ様😆🎵🎵 (2022年10月29日 19時) (レス) id: 486500e958 (このIDを非表示/違反報告)
黒山羊(プロフ) - 眠さん» コメントありがとうございます！間違いの指摘とても助かります！ (2022年10月23日 23時) (レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒山羊 | 作成日時：2022年10月8日 18時
