第二十話:絶望の時間 ページ27
久々に与えられた自由なので、ホールケーキアイランドをもっと探索しようと思い街に向かって歩く。
この国は全部が全部お菓子で出来ているようで、
昔母さんに読んでもらった童話を思い出しながら木に生えていたチョコ食べる。
暫く歩けば中心街に出て、私は驚く。
すれ違う人々に、
「カタクリ様との御婚約おめでとうございます！A様！」
と大きな声で言われるのだ。
その内沢山の人に囲まれて歩くのもままならなくなってしまい、
私は渋々路地裏に逃げ込む。
家の裏で溜め息をついた時、
目の前に新聞が落ちていたのを見つけた。
手に取って見てみると、驚きの内容だった。
『…なっ、何よこれ！』
その新聞には一面に私とカタクリが昨日行った、
茶会の写真が大きく張り出されていた。
「婚約が決まった御二人の写真。とても仲が良いそうです。」
と大きく見出しが書かれている。
『〜っ！どこがよ！』
私は怒りで震えた手で新聞をクシャクシャに丸めて、投げ捨てた。
『馬鹿にしないでよね、誰があんな奴と…』
私は立ち上がって、
スカートの裾についたビスケットの欠片を払い、目の前を見る。
少し先の家に、サンジが背中を付けて立っていた。
まさか居るとは思わなくて、私は無邪気にサンジに近付く。
何日振りだろう、まだ沢山聞きたい事があるのよね。
『サン…！』
でも、
そんな浅はかな気持ちは、彼の手を見て消えてしまった。
コックになりたいと言ったあの子。
ゼフという人に、命を懸けて救ってもらったあの子。
その人の知識全てを、教えて貰った両手に。
私と同じ、枷が付いていた。
煙草を吸って、また自分を犠牲にしている。
そんなサンジに、私はどう見えるんだろう。
泣いて、喚いて、
兄弟を傷付けて、上手くいかない事を他人のせいにして。
のうのうと助けを待ってる私。
貴方には、どう見える？
「……っA！！」
道の真ん中で立ち止まる私に気付いたサンジの顔は、
私と同じように、赤く目元を染めていた。
人の目があるからか、サンジは私の手を引くと路地裏に戻り再会を喜ぶように抱き締めた。
私も恐る恐る背中に手を回し、サンジを抱き締めた。
この間よりも少し細くなった身体は、彼の疲れを表していた。
この人はどれだけ、傷付いたんだろうか。
… … …
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黒山羊(プロフ) - 瑠璃さん» コメントありがとうございます！最後までありがとうございました！ (2022年10月30日 0時) (
レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 完結お疲れ様です❗とても良いお話でした(*´∀｀)素敵なお話ありがとうございました❗ (2022年10月29日 23時) (レス) @page50 id: 6c259301f0 (このIDを非表示/違反報告)
黒山羊(プロフ) - kyokunarebaさん» コメントありがとうございます。嬉しいお言葉です！最後までありがとうございました！ (2022年10月29日 19時) (レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
kyokunareba(プロフ) - 完結お疲れ様😆🎵🎵 (2022年10月29日 19時) (レス) id: 486500e958 (このIDを非表示/違反報告)
黒山羊(プロフ) - 眠さん» コメントありがとうございます！間違いの指摘とても助かります！ (2022年10月23日 23時) (レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒山羊 | 作成日時：2022年10月8日 18時
