・ ページ2
サンジはいつも私に夢を語った。
料理人になりたい、
この目で「オールブルー」を見に行きたい、
そう夢見る兄の背中を、押さない訳にはいかなかった。
そう思っていたのは、
ゼロ番目の姉「レイジュ」も同じだった。
その人間離れした力で檻をへし曲げ、サンジを逃がした。
私の檻も同じように…
私もサンジと共に外に出て広い世界を見たかった。
目を輝かせて語る「オールブルー」を見てみたかった。
でも私は、母に
父はサンジが逃亡するのを見逃したが、
私を逃がしたりはしなかった。
今でもあの父の声や顔を覚えている。
肩を強く掴まれた痛みをも記憶している。
今は亡き愛した妻の「生き写し」が必要だった。
贖罪でもするように、懺悔でもするように。
父は私に縋った。
私はただ、
サンジが無事に航海ができている事ばかり祈った。
それしか出来なかった。
… … …
時が経ち成長していく自分を、鏡で見るのが嫌いだ。
声も、顔も、全部。
母に似ている。
歳を重ね、「ソラ」に近づく。
私は私を見失いそうになる。
そういう時は部屋にこもって、ひたすらに自分の名前を発する。
そんな私を抱き締めてくれるのは、レイジュだけ。
それから兄達は、
昔と違って私に殴る蹴る等の暴力を振らなくなった。
逆に、精神的に攻撃するようになったんだ。
1番上の兄「イチジ」は私を床に押さえつけて、
「私の名前を呼べ」
と要求してくる。
『こんな事したくない。もうやめてよ。』
そう抵抗すれば、
「求めているのはAの方じゃない」
と私の頬を叩く。
痛みから泣けば、
「違う、母上はそういう風に泣かない。」
と言うのだ。
イチジは幼い頃に受けなかった母の愛を、瓜二つの私から変わりに求めるようになった。
それを他の兄弟達に知られるのも嫌だから、私はイチジの部屋に閉じ込められる。
酷い日は、
私をベットに招こうとする。
体を見て、母と違う所が無いかを確認してくる。
それが何よりも1番、気持ち悪かった。
レイジュがいつも助けに来てくれるから、体を汚されたことは無い。
… … …
1246人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒山羊(プロフ) - 瑠璃さん» コメントありがとうございます!最後までありがとうございました! (2022年10月30日 0時) (レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 完結お疲れ様です❗とても良いお話でした(*´∀`)素敵なお話ありがとうございました❗ (2022年10月29日 23時) (レス) @page50 id: 6c259301f0 (このIDを非表示/違反報告)
黒山羊(プロフ) - kyokunarebaさん» コメントありがとうございます。嬉しいお言葉です!最後までありがとうございました! (2022年10月29日 19時) (レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
kyokunareba(プロフ) - 完結お疲れ様😆🎵🎵 (2022年10月29日 19時) (レス) id: 486500e958 (このIDを非表示/違反報告)
黒山羊(プロフ) - 眠さん» コメントありがとうございます!間違いの指摘とても助かります! (2022年10月23日 23時) (レス) id: 61644a4ba4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒山羊 | 作成日時:2022年10月8日 18時