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第五十四訓 ページ10

屯所の門に向かうと、1台のパトカーが停まっていた。後部座席には女が1人。
運転席に乗り込む。「待ったかィ」とバックミラーを見れば、彼女は首を横に振った。


「…で、本当にいいのかィ」
「───うん」


窓の外を眺めながら、彼女は答えた。それを聞いて俺は車を発進させる。

平日の午後だからか、車通りはそこまで多くなかった。大通りを何度か曲がるに連れて道は狭まり、ビルや住宅地なんかも見かけなくなる。
車を40分程走らせた場所に目的地は存在した。すぐ後ろは森で、少し前まで警察とマスコミで賑わっていたそこは今は閑古鳥が鳴く様だ。

過激宗教組織幸艶教跡地。
Aが今回行きたいと俺だけに伝えた場所だった。


「って言っても、殆ど証拠品とかは回収された後だぜ。あんまり期待してもガッカリするだけでさァ」


一瞬沈黙が流れ、Aは立入禁止テープを躊躇せずにくぐり中に入る。本当に分かってんだろうな、と溜息をついて俺も彼女に続いた。

彼女は少しうろうろとしながらこの大きな屋敷の中を進んだ。そうか、あの部屋から出ることは少なかったから分からないのかと納得する。だが、ところどころ分かるようで、たまにスイスイと導かれるように進んでいた。


「幽閉って貴方達は言うけど、体を清めるためとか、皆で『神様』にお祈りする日とかおめでたい日には連れ出された」
「お祈りする日?」
「私にはよく分かんないけど、外の人はクリスマスとかお正月、復活祭とかに皆で集まったりするでしょ。それと同じ」


そうこうしているうちに、Aがいた部屋の前につく。かすかに聞こえる彼女の呼吸が、ほんの少し荒くなった。
豪華絢爛な襖を静かに開くと、昼でも薄暗い狭い部屋が出てきた。ここはまだ事件当時から変わっていないようで、Aの年齢には似つかわしくない赤子用のおもちゃなどが転がっていた。
その中にあったでんでん太鼓を拾い、指を使って回す。その名の通りでんでんとつまらない音が鳴った。


「ここでたくさんひでェことされたのかィ」
「…ええ」


部屋の中心にいた俺は入口を振り返る。部屋に一歩も入ろうとしないAは音もなくぽろぽろと涙を流していた。掌で涙を拭ってはいるが、コップから溢れた水のようにそれは止まらなかった。


「私、黙ってたことがあるの」


しゃくりあげるAは告白する。
悔しそうに歯を食いしばり、消えそうな声で俺に告げる。


「お父様にも…私は…何度も……」

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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:ぽん酢ちゃん | 作成日時:2019年7月14日 19時

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