第四十九訓 ページ5
二人は向き合って、何やら覚悟を決めたように頷くと、懐から一枚の写真を取り出した。
「今から見せる写真は、同じ地下で見つけたものだ。なかなかショッキングなやつだけど、見せることを許して欲しい。じゃないと話が進まないからね」
近藤さんはもう一度、すまない、と謝ると、俺達に写真を差し出した。伏せられたそれをめくる。…その異常さに、俺は思わずはっと息を呑んだ。
足には触手、腕には鱗。割かれた腹からはツルが伸びていて、顔は全くAと一緒…。人間の子供でいうと3歳くらいの謎の生物のホルマリン漬けの写真だった。
Aは嫌悪からか眉間にしわを寄せると、「やめて」とだけ呟いて写真を近藤に戻した。
深呼吸をして、頭を抱える。今ので相当参ってしまったようだった。
「…何、それ」
「他の胎児達と同じ、新人類になれなかったモノだ。この子…標本Aと呼ぼうか。標本Aは天海氏の中でも記憶に残った子らしくてね、たくさん話してくれたよ」
何でも、Aを除けばいちばん長生きした実験体らしい。その標本Aからヒントを交え、Aが完成したのだとか。聞いてて気分が悪い。
「それで…この標本Aが生存した期間なんだけど、天海氏によると1年にも満たないらしい」
「その標本Aが保管されてたガラスケースのプレートには、11ヶ月と27日間生存と書かれてた」
「…?どういうことですかィ」
何が言いたいのか分からず首を傾げる。近藤さんが言いにくそうに「いや、おかしいだろう」と答えた。
「どう見たって1年未満でここまで成長しないだろう。成長速度が早すぎる」
「だから聞いたんだよ。この標本Aの見た目が3歳児くらいなのに生存期間が1年未満なら、Aはどうなんだってな」
Aが目を見開いた。自分のことを16から18歳だと認識していた前提が間違っている。
唇を震わせ、Aは問う。
「…私の…体の年齢は…何歳なの」
「4年だ」
それを聞いて彼女は愕然とした様子だった。しかし彼女はそれでも食い下がる。
「じゃあこの私自身が自覚している年齢は何なの?」
ギロリとAに睨まれるも、土方さんは全く気にせずにその質問に答えた。
「それは天海がお前に刷り込んだ…所謂洗脳だ。お前はコールドスリープの容器のようなもので1年と半年ほど生育されていた。その際お前の脳の中に年齢や名前等をデータとして入力したと言っていた」
80人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽん酢ちゃん | 作成日時:2019年7月14日 19時