四十九 ページ49
『はぁ…ありえない』
ミツバちゃんが亡くなったその日。十四郎ちゃんと激辛煎餅を食べていた後から記憶がなかった。煎餅で記憶をなくしたのか、それとも傷の痛みが走ったのか、全く覚えていない。次に目を覚ましたときは真っ白な部屋にいた。
病室だと気づいたのは数秒後。
周りを見渡すが誰もいない。枕元にあった携帯を確認するが電池が切れていたようで画面は真っ暗だった。時間がどれくらい経ったかわからない。
そんな私の気持ちを表すのが冒頭の台詞である。
___あり、私なんで雪姫抱いて寝てんだ。
自分の愛刀を抱いて寝ていたことに恐怖を感じてそっと近くの壁に立てかけた。今回はこの子に随分助けられた。いや、昔からか。柄糸の部分が解れかけている。刃毀れも酷いだろうし近々鍛冶屋にでも行こうと思った。
ガラガラと音を立てて引き戸が開く。
「…起きたか」
『十四郎ちゃん…』
ベッド脇のパイプ椅子に座るとゴキゴキと首を鳴らす。目の下のクマはいつになったら消えるのか。それを問うのは野暮な気がしたからどれくらい寝てた?とありきたりなことを聞いた。
「そんな寝てねェよ。大体二日だ」
『へー二日ね、…………二日!?はぁ!?』
「うるせェな、傷に触んぞ」
『いや、ねぇ二日って。あの、そのミツバちゃんの…』
「…明日だよ」
先の言葉を察したのか私の欲しい言葉をくれたのでホッと胸を撫で下ろした。
煙草を咥えて火を付ける。天井に向かっていく煙を眺めてみるが一応ここ病院なんですよね。私もいつもの光景とあって何も言わずにしていますが禁煙なんですよ。溜息を吐けば私の気持ちが伝わったのか一言気にすんなと。
__病人の健康よりも煙を取るか。
もう一度溜息を吐いた。
89人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:翡翠 | 作成日時:2018年8月31日 0時