四十七 ページ47
髪を絡めていた手にゆっくりと頭を撫でられる。
「Aちゃん、そんな顔をしたら駄目。折角の美人が台無しだわ」
『ミツバちゃんには劣るって…』
懐かしい心地に目を細めて笑えば「その顔よ」と優しく。
少しずつ弱っているのが触れている場所を通して伝わってくる。
温かい手が少し冷たくなる。両手で包めば心なしか温もりを取り戻したような気がして。けれど、伝えられる時間は限られている。
ずっと言いたかったこと。口にしたかったことがあった。保証なんてないけれど、どうしても言いたかった言葉を告げるためにそっと口を開く。
__また会えるよね?
目を見開く、そして目に涙を溜めながら一つ頷いてくれた。今私に向かって笑いかけてくれているのを見て、少しはこの笑顔を守れたのかなと。
「総ちゃんのこと、頼むわね」
『え…?』
「あの子には、これを機に姉離れしてもらわないと。私が居なくなって引きずってほしくないもの。けれど、あの子に甘える場所はあってほしいの。だからAちゃん」
『総悟くんは大丈夫、私がちゃんと守るから』
ミツバちゃんはありがとうと笑った。
ガラガラと音がして背にしていた扉が開き、総悟くんが唇を噛み締めそこに立っていた。扉のすぐ横の窓硝子には近藤さんや他の隊士もいた。
『私は私の武士道を貫くよ』
ミツバちゃんは笑った。握っていた手を離してそっと手を振った。
__またね、ミツバちゃん。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年8月31日 0時