四十五 ページ45
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刀を投げる時に捻った所為か体が痛みだす。その痛みの中腹を打ち抜かれていたことを思い出す。
怒りで我を忘れていたからか今感じる痛みは凄まじく右膝が地に着く。先程巻いたスカーフの切れっ端は役割を果たしてなくて、そこを通して血がコンクリートの床へと一滴ずつ、確実に落ちた。
体がゆっくりと後ろへ倒れていく。
「A!!」
倒れそうになったその体を支えてくれたのは近藤さんだった。馬鹿野郎!と怒鳴る声に一瞬肩が震えた。目を合わせてみれば、彼は涙を溜めていた。
ホッとした表情を浮かべて私をぎゅっと抱き締められた腕が暖かくて涙が出そうになる。
そこにザキちゃんが駆け寄ってくるのが見えた。
『ごめ、んなさ…』
「もう喋んな!山崎!A連れて病院に走れ!」
ザキちゃんは私を背負い、斬られた浪士達の上を走る。こんなに斬ったっけ?と自分のしたことを思い返そうとするが浮かばなくて苦笑いがこぼれた。十四郎ちゃんのことが心配だったが原付に乗った旦那と今すれ違ったし、近藤さんにも場所を伝えたから大丈夫だろう。
__とんだ迷惑かけちゃったな。
情けなくてザキちゃんの隊服を握り締めれば、大丈夫とザキちゃんは声をかけてくれた。
『助け呼んでくれて、ありがと』
そこで意識は途絶えた。
次に目が覚めた時は病院のベッドの上で、点滴やら酸素マスクやらに繋がれていた。大事になる前に病院に来たことで大きな手術にならなくて済んだとか。
どうやらあの雑な巻き方をしたスカーフがそれなりに血を止めていてくれたらしい。ザキちゃんの顔を見て安心していれば、ガラガラと音を立てて扉が開く。
__どうやらその時がきてしまったようだ。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年8月31日 0時