この世界の片隅に【土方十四郎】 (ページ31)

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三十一ページ31

『総悟くんの気持ちは痛いくらいわかる。ミツバちゃんの今後を思ったなら私だって見逃したい』

「だったら！」

『でも！』

総悟くんの言葉を遮るように言葉を被せる。彼の手を握る力が少し強くなる。他にも策はある筈だと思った。こんな形でなくてもいい筈だと。けれど私は思うんだ。

『ミツバちゃんの幸せはアイツの隣じゃない…』

「A…」

『お願い…わかって』

「…いっときでも幸せを味合わせてやりたかったんですけどねィ」

『総悟くん…』

いつもの彼にはない表情に胸が痛くなる。ミツバちゃんを凄く大切にしているのは昔から知っていた。知っていたからこそこんな表情をさせたくなかった。けれど同時に彼の姿も浮かぶ。

ミツバの為だ

昨日の夜、何故このタイミングなのかと問うた時すぐにそう返ってきた。最初は意味がわからなかったが今となってはその理由が痛いくらいにわかる。彼はミツバちゃんには幸せになってほしい。それだけなのだ。

だからこそ蔵場をしょっ引くと。彼が考えを曲げるという事はあの時ミツバちゃんを突き放した意味がなくなる。

今回彼は悪役になりすぎだ。いや不器用すぎるのか。心の内はこんなにも熱いというのにそれを表に出すとなると何故こんなにもうまくいかないのか。けれどそんな彼を支えるのが副長補佐である私の役目。そして彼の道を信じて従うのもまた私の役目。

だから私は総悟くんがなんて言おうと、蔵場をしょっ引く。

握り締めた彼の手をさすっていると沖田隊長ォォォォォ！！と走ってやってきたのは原田だった。原田の顔色は真っ青で何かあったとすぐに気づく。握った手の先から震えを感じる。嫌な汗が背中を伝う。

『「は…？」』

私たちが原田から受けた報告は聞きたくないものだった。