二十一 ページ21
ミツバちゃんが楽しそうに笑う声が聞こえて視線を向けた。
あの時。
少し前に稽古をサボってた総悟くんを十四郎ちゃんと迎えに行った時、その時と同じように無邪気に笑っていた。
私の隣に座る総悟くんはそれを見て仏頂面。そして一言、気にくわねェと。十四郎ちゃんを睨むが彼は蕎麦に夢中な為気づかない。そんな総悟くんがなんだか気掛かりになり声をかけた。
『本当にミツバちゃんの事好きなんだね』
「…ンだよ、文句あんのかィ」
『んーん、ないよ。ただ羨ましくって』
「は?」
私の言ってることの意味がわからないというように眉を寄せる総悟くん。なんでもないよと言葉を紡いで目の前の蕎麦を一口。美味しかった筈の蕎麦が少しだけ不味くなった気がする。幼いながらにしてそれが嫉妬だと私は自覚した。胸の中を占めたその感情の追い出し方を忘れ方を知らなかったが、同時に別の気持ちが湧き上がる。
__二人が幸せなら、いっか。
ストン、と何かが落ちてスッキリした気がする。忘れてた、この恋の行方を。それを再度認識した今、私ができることは二人を応援すること。気付ければ胸は軽くなり、蕎麦もまた味を取り戻した。頬が緩む、それを見た総悟くんがキッモとか言ってるけどそんなの耳に入らなかった。それくらい今の私は機嫌が良かったから。
そこで映像は途切れ、目の前には見慣れた天井があった。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年8月31日 0時