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日が沈みかけている。
そろそろではないだろうか。
「瑠璃!」
私を見つけて駆けてくる。
その目はとてもキラキラしていた。子供か…
「やっと来たか。オイラ達で普通に月送りを楽しんじゃったぞ。」
「本当にすまなかった。旅人達もありがとうな。」
「仕事は大丈夫なの?」
「あぁ。後は堂主がやるべきことだからな。」
往生堂の堂主は確か、あの女の子だっけ。
まだ若いのだろうに…凄いな。
「じゃあ私達は失礼するね。二人で楽しんで。」
「今日はありがとう、旅人さんにパイモンちゃん。」
「またな〜!」
私は彼女らに手を振り別れる。
手を振っていた反対側の手を掴まれる。
「さぁ、行こう。瑠璃。」
「うん。」
手を繋ぐのも…悪くわないかな。
日が落ちても、璃月港は明るい。それにあたたかい。
雑貨屋には違う国から輸入した装飾が売っている。それぞれの国に、それぞれの良さがある。
「旅か……。」
私はこの璃月から離れたことがない。
外の景色を見てみたいという気持ちがある。
「ん?どうした。何か欲しいものでもあったか?」
「え。いゃ、国によって雰囲気が違うなぁ〜って思って。」
そうよ。私が旅に出たら、鍾離はどうなるの?
この数千年、彼は私がいない世界で生きていた。
愛してる私がいなくなったらどうなる?
私は、どうなの?
「瑠璃?」
「あ、ごめん……。」
「昼間、旅人たちと一緒に見て回ってたみたいだから疲れてるのだろう。大丈夫か?」
「うん。」
「……琉璃百合だけはお前に見せたい。」
そうだ。月送りの名物は琉璃百合だ。
それだけは見ておこう。
私達は琉璃百合が沢山咲いているところへやってきた。
案外人がいっぱいいると思っていたが、あまりいない。
「皆、琉璃百合の蕾が開く瞬間を見たくて集まってくる。開いた今は人が少ないんだ。」
「なるほど。」
私は琉璃百合を近くで見ようと近寄る。
すると、琉璃百合が一斉に光りだす。
「…!!」
「あわわ……。」
近づいただけでも光ってしまうのか。
ちらほらいた人達は琉璃百合と…私を見る。
困った私を助けるように、鍾離は私の腕を引いて走り出した。
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作者名:ふく | 作成日時:2022年8月10日 23時