トリップしたから推しに愛を語ろうと思う (ページ6)

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4話ページ6

『これジュースですか』

ディルック「未成年に酒は出さない」

『マジぴえんじゃん…』

ぴえんと言った自分は今全力で真顔だ。そんな事言って許される年齢じゃない。要するに平気で成人している。

ここ数年…と言うか今年か。成人が18になった。けれど自分はちゃんと20歳で成人を迎えている。つまりもう既に20歳は超えているのだ。多分ディルックの旦那とは一つくらいしか変わらない。ジン団長なんて同い年だろう。

少し辺りを見回した。エンジェルズシェアと言えば、モンド好きは毎日の様に入るのではないだろうか。自分は璃月推しだったけれど、モンドは心の故郷だと思っているから毎日の様に通っていた。エンジェルズシェアも暇があれば入る程に。

店内の雰囲気は、ゲームでやったまんま。それが立体的になっただけだ。元々比較的立体的な動きをするゲームだったが、今はそれ以上。さながら4D状況だ。

『…本物のエンジェルズシェアだ…しかも旦那がバーテンしてる…たすけて…オタク死んじゃう…』

ディルック「…君の言葉は一々難しすぎる」

額を抑えつつ悶えていれば、旦那はとことん分からないと言いたげに眉を顰めた。けれど直ぐに落ち着いたと思えば蛍ちゃんにぶどうジュースを差し出した。

蛍「それで、さっきの話なんだけど…」

『ウン』

蛍「家は？」

『ないね』

蛍「この先どうするの？」

『知らない』

目先の問題はこれだろう。自分には行く所がない。帰る所がない。困ったものだ。

とは言え彼女と一緒に旅に出たい、と言う訳にもいかないだろう。自分は神の目も持っていないし、元素力も使えない。身体能力も飛び抜けている訳じゃなければ、何か突飛した能力がある訳でもない。強いて言うなら人を困らせる事は出来る。

『だから嫁入りするしかないと思うんですけど、どうですか？旦那』

ディルック「今は恋愛を視野に入れてないんだ」

『断り方が優しい…お前みたいな意味の分からない奴無理って言う訳でもないその優しさに惚れ直す』

パイモン「じゃあオイラ達と旅に出るか？旅人も同じ様なものだし…」

『ありがたい申し出ですね』

蛍「私は良いよ」

『本当に優しさの塊なんだよな…行かないけど』

ぶどうジュースの入っているグラスを弄ぶ。縁をくるくると指でなぞるこの感覚が、大人っぽくて何だか好きだ。

『自分、何の力もないですからねぇ』