トリップしたから推しに愛を語ろうと思う (ページ5)

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3話ページ5

『蛍ちゃん！！私の救世主！！』

蛍「ええ…」

よくある話じゃないか。二次創作でも夢小説でも、前に読んだ少女漫画でも。異世界から来たと言う事を信じて貰うと言う目的ではないかもしれないが、自らを信用して貰う為にはそれが何より早かった。

───トリップでもしてなければ、本人しか知らない様な内容を、口に出してしまえば良い。

本当はそう言うのは好きじゃないのだ。誰だって自らの過去を人に話されるのは嫌だろうし…何よりこの方法にはハンデがあるから。でも、今更話を変えるより直接言った方が気が楽だ。

『蛍ちゃんの事話せば良いですか！？それとも空くん！？───「王子」様になった空くんの話をすれば良いですか？』

蛍「…！！」

傷付けるだけの発言だろう。ごめんね、蛍ちゃん。

でも今は、「傷付いている事に気が付かず信じて貰う為に必死なオタク」を演じさせて。

『ダインスレイヴと一緒にした旅の話をすれば良い？それとも璃月で見た事聞いた事？王子様で反応したって事はここの時間軸は既に璃月には行った後だと思うんだよねぇ…他に何の話する？』

蛍「…しなくて良い」

『でも信じて貰いたい…』

蛍「信じる。…その異世界はどんな世界なの？」

『この世界がゲームとしてプレイされる世界』

気分は良くないだろう。自分達が「ゲームのキャラクター」扱いを受けるのは。

自分だったら凄く嫌だ。特に原神とか。だって怪我はするわ育成素材も大変だわ聖遺物も…ああ色々考えてたらパンクする。ここに来てなかったら今頃また原神開いて樹脂溜まりきってないか見たりしてたんだろうな…

蛍「…分かった、信じるよ」

ディルック「…君が本気で信じるなら、僕が疑う必要はない」

パイモン「旅人のお兄さんの事知ってたからな…」

空気が重くなっているのを感じる。

ディルックさんは勘が良いと思う。今の会話だけで、それを“聞いちゃいけない事”だと察したのだから。それに比べて自分は今それに気付かないふりをしている。

その方がここでは生きやすいかもしれない、なんて、自分の事しか考えられないんだよな。

ディルック「立ち話はここまでにしよう。エンジェルズシェアへ行こうか。飲み物なら奢る」

パイモン「食べ物は！？」

ディルック「好きにすれば良い」

パイモン「さすが旦那だな！太っ腹！！」

君も来るだろう。そう言ってくれたディルックさんに、にこりと笑いかけた。