旅人の来訪 ページ3
「いらっしゃいませー！」
女性の張りのある声が響く。
場所はオルモス港のとある商店だ。
「Aちゃん！ あっちのお客さんを頼むよ！」
「わかりました！」
Aと呼ばれた女性はパタパタと駆けていく。
「すみません！ お待たせしました！」
「こんにちはー！ オイラたち、ちょっと聞きたいことがあって来たんだけど……」
Aにあてがわれた客は金髪の旅人と、浮遊する小さな生き物だった。
「聞きたいことって何でしょうか？」
「最近、ここら辺で奇妙な建物を見かけたって噂を聞いて
依頼を受けたんだ。それで色んな人に話を聞いてるんだけど、何か知らないか？」
Aはその変わった冒険者たちが噂の英雄であることに気づいた。
「あの、間違いでなければ、あなたたちは噂の……スメールを救ってくださった方たちですね？」
「へへ！ もう聞き飽きたぜ！
そう！オイラたちこそ、草神とスメールを救うのに大活躍した英雄だ！」
「サインでもいる？」
自慢げな顔をして腰に手を当てて胸を張る2人に、Aは思わず吹き出してしまった。
「仲がいいんですね。いつも依頼で駆け回ってるという話も聞いたことがあります。
今回も無茶をしてるんですか？」
「今回は建物の調査だけだから、そんな無茶にはならないと思う」
黄金色の真っ直ぐな瞳をした旅人は、「それで、」と話を戻した。
「奇妙な建物──話によれば、見た目はただの秘境だけど、
近づくと酷い頭痛に苛まれて脳内に語りかけられるって」
Aは心当たりがなかった。
申し訳なさそうにそれを伝えると、旅人たちは「問題ない」と首を振った。
パイモンはやれやれといった様子で首をすくめた。
「知ってる奴も何人かいたんだけど、誰も細かい詳細が分からないって言うんだ。
実際に被害にあった人にも会ったんだぜ。
けど、『頭が痛くなって、気づいたら道を戻っていた』しか言わないし……
オイラたち、もうお手上げだぞ……」
Aも「それは奇妙ですね」と神妙な表情で呟いた。
──が、ふと気になることを旅人たちに聞いた。
「そういえば、どうして私に聞いたんですか？」
2人は顔を見合せて再び視線をAに戻した。
「それが……脳内に語りかける内容が一致する人を巡ってるからだ」
「というと？」
「『オルモス港に逃げた女を連れてこい』……それが、"内容"だよ」
続く (更新停止中)
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作者名：ウェイウェイ | 作成日時：2023年12月1日 22時
