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事情8 ページ10

「お、おい空!前見ろ前!」




パイモンが焦ったように空の衣服を掴みながら前方を指さす


空が我に返ったように、指示された方角を見ればそこには一匹のリシュラボン虎がこちらを見つめていた




すぐさま剣を取り出し、いつでも応戦できるようにする


しかし、彼らの予想と反してリシュラボン虎はただゆったりと優雅に歩いて二人に近づいているだけである


まるでこちらに敵意はない、とでもいうように


そんなリシュラボン虎の様子に拍子抜けする二人


彼らは思わず顔を見合わせ、向き直る




本来であれば襲い掛かってくるであろうこの状況でただ歩いているだけ…?




動物は人と違い、理性や論理的思考など持ち合わせていない


何より二人はスメールの地に足を踏み入れた瞬間から襲われたことがあるという経験によって、そう認識していたのだったが


二人が一匹の動向を見守っていると、不意にぴたりとその足を止めた


その距離は襲撃しようにも少し遠い距離で、お互いにとって適度な距離が保たれていた


たかが動物に果たしてそこまでの知性があるのだろうか




リシュラボン虎は二人を見据え、くるりと背を向けた


しかし数歩歩いてから彼らを振り返った


そしてじっと見つめたまま微動だにしない


まるで彼らが動き出すのを待っているかのように




「お、おいこれって…」


「…着いて行ってみよう」




そんな突拍子もない空の提案に驚愕の表情を浮かべるパイモン


しかし、空は剣を仕舞うと一歩ずつリシュラボン虎に近づく


パイモンだけは恐怖のあまりに最初こそ動けなかったが、数歩歩きだしても襲わないリシュラボン虎を見て少しばかり警戒を解きつつも、空の背中に隠れる


この奇妙な動物一匹と二人の行列は、ヤスナ幽境の奥深くへと進んでいく


鬱蒼(うっそう)と生い茂る草を踏み分け、水たまりを超え、魔物に気づかれぬよう横を通り過ぎ




ついに彼らはヤスナ幽境の中心部の池へとたどり着く


苔の生えた太い木の根が張り巡らされ、池には白い花が咲き乱れており、中央の岩には植物が生え、そこには細い木の根が幾重(いくえ)にも絡みつき、一部の岩を持ち上げている


一部の根は空に向かって伸びているようにも見える


そんな人が立ち入らない、自然を感じさせる池の(ほとり)




一人の少女が立っていた

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宇琉夜ハル(プロフ) - 夢主とpaimonnと空が入った場所今更ですけど見つけましたー! (5月25日 13時) (レス) @page11 id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぞーきん。 | 作成日時:2023年1月11日 9時

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