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私が、心に深い傷を負うこととなった事故の日。

それは、私が研修医として東京海浜病院で働き始めてからしばらく経った頃のことだった。

あの日は、両親と久々の旅行に出かけていた。



「…A。配属希望はもう決めたのか。」



運転席に座る父は、後部座席の私にそう投げかける。



「…うん。わたし、やっぱり脳外に行きたいと思ってる。」



「…そうか。」



仕事人間で、ポーカーフェイスな父が、いつもより嬉しそうにそう言った。



「…お前なら、そう言うと思っていたよ。」



「Aなら、きっといいお医者さんになるわ。」



父に続き、母もにこにこと微笑みながら相槌を打ってくれる。医大卒業後、必死に仕事に向き合っていた私は、温かい2人の言葉にいつも背中を押されていた。



「…うん。頑張るよ、私。」



目の前のトンネルの天井が崩壊したのは、
笑顔でそう返した、ちょうどその時だった。



唸るような轟音と、忘れられない衝撃。
すぐに視界が歪んでいくのが分かった。



父の呼びかけですぐに意識を取り戻した私の目の前に広がっていたのは、既に血の気のない母と、必死に蘇生を試みる医師としての父の姿だった。



震える身体を必死に動かし、自分より遥かに豊富な経験を持つドクターである父と共に、母の治療を開始する。



しかし、その願いも虚しく。
医療資材なども全くない、すぐに助けも呼べない、そんな暗いトンネルの中で、母は間もなく息を引き取った。



溢れる涙を拭くこともせず、近くに居た人の手当にまわる父の背中を見て、その強さに圧倒されたのを覚えている。



今思えば、本当は強くなかったのかもしれない。娘であり、医者の卵である私の前では、ひとりの医者として居ようとしてくれていただけかもしれない。



しかし、今となっては当時の意思など聞けなくなってしまった。



トリアージをしてまわる、父と私。
父は、その直後に起きた2度目の崩落に巻き込まれ、私の救命措置の甲斐もなく、亡くなった。



心が、引き裂かれた瞬間だった。



いつか大切な人を守れるように、と願って医師を志し、全ての時間を費やしてきた私にとって、その志半ばで両親を失った事実は、あまりにも残酷だった。

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なーお - 続きがとても楽しみです!頑張ってください! (4月13日 15時) (レス) id: 6f6733fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
Ria(プロフ) - きゃー 続きが楽しみ楽しみ (11月26日 9時) (レス) @page14 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mi | 作成日時:2023年11月15日 2時

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