Good night Dear (ページ30)

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Episode 15. ページ30

- Otowa Side -

再会したあの日から感じ続けてきた違和感は、今朝の彼女の話を聞いて、確信となった。

彼女はきっと、音羽と過ごした学生生活のほとんどを忘れている。

思わぬ再会を遂げた事故現場で、俺の顔を見た瞬間、目を見開いてくれたから。

彼女の中にはまだ自分が居る、と言い聞かせてきたが、悲しげな表情を浮かべて昔話をする横顔には、もう自分は残っていないのだと突きつけられた。

「＿＿＿都庁危機管理対策室から伝達。墨田区向島8丁目の神社境内にて爆発事故発生。祭り会場で屋台の燃料タンクが爆発、炎上した模様。中規模医療事案と認定。TOKYO MERの出動を要請する。」

けたたましく、アラームが鳴った。

「MER了解、出動します。」

「音羽先生で最後です。閉めます。」

ジャケットを羽織り、TO1へ乗り込むと後ろに居た喜多見チーフが勢いよく扉を閉めた。

「え？A先生は？」

「今日は心外で大きなオペがあります。A先生はその執刀医です。」

不安気な弦巻先生の問いかけに対し、表情を変えずに答える喜多見チーフ。しかし、普段と変わらないように見えて、たしかに車内の空気はピリついていた。

喜多見チーフと彼女が居るなら大丈夫だろう。どことなく、そんな雰囲気があった。いつもと何かが違う、居心地の悪い空気を切り裂くように、また無線が入った。

「＿＿＿こちら危機管理対策室。現場の映像を共有します。負傷者の数、分かっているだけで16名です。火傷や熱傷が多く、一部重傷者も含まれている模様。」

「＿＿＿MER了解。ミンさん、タグ40用意で。」

「了解。」

「夏梅さん、点滴30で。」

「はい。」

「徳丸くん、可燃性ガスが出てる場合は酸素の取り扱い注意しましょう。」

「了解。」

「＿＿＿喜多見チーフ、室長の駒場です。」

「＿＿＿喜多見です。どうしました？」

「＿＿＿東京海浜病院から、研修医はバックアップに徹するようにという連絡を受けています。こちらとしても、喜多見チーフ、音羽先生、A先生の3ドクター体制を想定してオペレーションを組みますが、よろしいですか？」

「＿＿＿…A先生は、心外の緊急オペに執刀中。出動しません。彼女は来ないものとして、オペレーションをお願いします。」

「＿＿＿失礼。では、2ドクターということで案内します。」

いつもは4人いるはずのドクターが、2人。
いつもより、厳しい壁が立ちはだかっていた。