Good night Dear (ページ20)

今日:81 hit、昨日:78 hit、合計:27,444 hit

Episode 10. ページ20

-Tokumaru Side -

「次の患者さん入ります！不整脈起こしてます！」

「血圧測って、ルート確保。」

患者を連れて入ってくるミンさん。一瞥するなり、処置の手をとめず指示を出す音羽先生。

「音羽先生、こっち人口呼吸器まわりました！」

「…。」

「そっち私が入るわ。この患者さん止血終わったから搬送にまわして。」

「了解。」

俺に声をかけられ、一瞬戸惑った音羽先生も、A先生の瞬時の行動に安心したかのような表情を浮かべる。

「心タンポナーデね。」

「すぐ開胸しないと間に合わないな。」

「ええ。この方ERカーに運んで！」

いつの間にか合流した2人の医師は、信じられないスピードで診断を下し、またしても指示を出した。

「すげぇな…。」

「A先生と音羽先生って、息ぴったりなんですネ。」

思わず声を漏らしてしまう俺とミンさん。
それもそのはず、背を向けあって処置を行っているはずの2人は、常に互いの状況を把握し合い、時には手助けをしながらひたすら手を動かし続けていた。

「A先生、もしかして音羽先生ともいっしょに働いていたことがあるんですかネ…？」

「いや、喜多見チーフとは働いてたって言ってましたけど…。」

突如現れたチーフドクターと知り合いで元チームメイト、自身も病院が誇る凄腕ドクターでありながら、医系技官である音羽先生ともものすごく相性がいいなんて。

彼女は、何者なのだろうか。

そんなことを考え僅かに手を止めていた瞬間にも、2人のドクターは汚れた手袋を付け替え次の患者を受け入れる準備を行っていた。

必要な言葉だけ交わし合い、共に助けあい進み続ける2人からは、例え目を合わせていなくとも、互いを信頼しているという空気が、ひしひしと伝わってきた。

その姿は、まるでかつての旧友のようだ。