Good night Dear (ページ19)

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目を合わせずそういった彼は、すっとトリアージタグを差し出す。彼から託されたタグを受け取り、私はあたりを見回した。

「お名前言えますか？」

「大丈夫ですか？」

「徳丸さん、手伝います！」

駆けつけてくれたのは彼だけじゃない。
まだ発足したばかりのTOKYO MERが、チームの未来よりも人の命を優先して、ただ懸命に動いていた。

「ここにいるのは、もう俺たちだけじゃない。」

「喜多見先生…。」

いつの間にか隣に立っていた喜多見先生は、煤まみれの顔を拭いながらそう言った。

「消防も、レスキューも、ほかの医療チームも続々と現場に到着していると無線が入りました。さぁ、俺たちも行きましょう。」

目を背けたくなるような4年前のあの日。
でも今日は違う。あの日には見いだせなかった、希望の光が差し込んでいた。

「音羽先生、A先生、ミンさん、徳丸くんは赤タグの人から医療テントに運んでください！」

「はい！」「了解！」

混乱した現場を察知した喜多見先生は、瞬時にメンバーに指示を飛ばす。その頼もしい姿は、かつて同じチームにいた頃と全く変わって居なかった。

「夏梅さん、この患者さんERカーに。冬木先生は、オペの準備！」

「「はい！」」

「比奈先生はトリアージ終わり次第、俺のオペのフォローに。」

「はい…！」

指示を終えた彼が、私の肩に手を置く。

「A先生、あなたと音羽先生にそっちは頼みました。」

「……。」

「あなたになら、任せられる。俺はそれを知っていますから。」

「…はい！」

私の返事と共に、しっかり目を合わせて頷き合う。
その視線は、お互いが積上げてきた経験と、たしかな信頼に満ち溢れていた。