Episode 8. ページ17
- Otowa Side -
___私は、誰かに私と同じ後悔をしてほしくないんです。
先程の彼女の言葉が頭から離れない。ジャケットの裾をつかみ、今にも泣きそうな顔でそう言い放った表情も。
かつての自分なら、素直にその理由を聞けていたのかもしれない。でも、今は。
「…音羽先生??」
「…すみません。」
隣に座っていた弦巻先生の声でふと我に返る。
「審査会に身が入っていないようですね。まぁ、それもそのはず。発足したばかりのTOKYO MERの医師2名が身勝手な行動で審査会を欠席でしょう。困ったものだ。」
久我山はにやりと笑ってこちらに話しかける。
「喜多見幸太医師だけではなく、えーAA医師も好き勝手な行動をされているようですね?所属は、東京海浜病院心臓血管外科?いくら腕が良くてもね?先が見えない医者じゃ使いものになりませんから。」
再び久我山が放った言葉に、部屋の中は笑い声が混じったようなどよめきに包まれる。
「現場を視察した医系技官として、いかがですか?」
白金大臣の鋭い視線がささる。
彼女は、身勝手な医者なんかじゃない。
心のどこかではそう分かっているのに、反論するにはあまりにも材料が足りなかった。
どうにか言葉を選び、口を開こうとしたその時。
「失礼します。」
慌てて入ってきた都庁職員と、みるみる表情を曇らせていく赤塚都知事。彼女の手元にあったタブレット端末から、異常事態を知らせる警告音が鳴り響く。
「__品川区八潮6丁目、解体作業現場で爆発に伴う大規模な崩落事故発生。漏れ出していたガスに引火したものと思われる。要救助者多数。大規模医療事案と認定。TOKYO MERの出動を要請する。」
静まり返った部屋に響いたその無線と同時に、小型モニターには現場の惨状が映し出される。その様子を見て、音羽以外のメンバーは焦ったように一斉に席を立った。
読めない表情を浮かべた白金大臣、苦虫を噛み潰したような表情の久我山を一瞥し、部屋を出ていくメンバーの後を追う。
___私は、誰かに私と同じ後悔をしてほしくないんです。
かつて同じ場所で同じ目標を志し、共に学んできた仲間であるあなたが、そう言うのならば。
できれば、あなたにももうそんな想いをして欲しくない。
どこか懐かしいような、そんな感情を胸の奥に押しやり、ただひたすらに走った。
319人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なーお - 続きがとても楽しみです!頑張ってください! (4月13日 15時) (レス) id: 6f6733fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
Ria(プロフ) - きゃー 続きが楽しみ楽しみ (11月26日 9時) (レス) @page14 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mi | 作成日時:2023年11月15日 2時