Good night Dear

~ ページ16

彼女は、事故の日の自身の判断を悔いているのかもしれない。



ダメ、私みたいにならないで＿＿＿



比奈先生に声をかけようとしたその時、いつのまにかモニターを覗き込んでいた喜多見先生の低い怖色が響いた。



私だけが、ききとれるような小さな声で。



「ガスの処理場…？」



「え…？」



思わず聞き返した私の顔を見て、彼は何も言わずに頷いた。



かつて、共に働いていた時と全く同じ目をしていた。



彼となら、きっと。



「徳丸くん、車出して。この現場向かうよ。」



「ええっ！！！！？」



「これから最終審査会ですよ！！？」



「それに出動要請がないのに勝手に行くってのも…。」



驚く徳丸くん、反対するメンバーたち。
そんな様子に背を向けて、わたしは真っ白なジャケットを羽織る。



「いいから、はやく。」



戸惑う彼の腕を引き、スタッフルームの扉に手をかける。



「A先生。あなたまで出動するおつもりですか？」



すれ違いざま、音羽先生の冷たい声が響く。



「もちろん。助けを求めている人がいるかもしれません。」



「いるかもしれない。そんな可能性にかけて、MERの未来を放っておくおつもりですか。」



「…。審査会は、音羽先生がいるじゃないですか。私は、誰かに私と同じ後悔をしてほしくないんです。」



視線がぶつかる。彼が呆れたようにため息をついたのを見届け、わたしはすぐさま身体を翻した。

Episode 8.→←Episode 7.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す